• ハングルの詩のある風景 : 素月と凧揚げ 第13回

    詩子アナ:漢字に目が行くようにして、実はハングルの影に「独立」という漢字を隠し入れていたとは驚きです。キーとなるハングルに「혼자 섰으면」が挙げられていましたが、こういう意味だったんですね。

    歌樽先生:キーとなるハングルがもう一つありましたね。

    詩子アナ:はい、「네 길거리:四辻」がもう一つのキーとなるハングルでした。

    歌樽先生:何か思い当たることはありませんか。

    詩子アナ:まだ、思い当たるものは何もありませんが、連想力を鍛えなければいけませんね。

    歌樽先生:はい。どんどん鍛えましょう。独立といえば何を連想しますか。

    詩子アナ:誰もすぐに連想できるものではだめですよね。捕まってしまいますから。何かに例えていうとどういった感じですか。

    歌樽先生:例えるのも難しいのですが、敢えて例えれば、霧の中で微かに見える人影を頼りに歩くといった感じでしょうか。

    詩子アナ:微妙ですね。

    歌樽先生:微妙ですが、人影が見えると見えないとでは雲泥の差ですからね。素月はいろんなところに網を張っていますので、そのあたりが分かれば推測ができるのですが。

    詩子アナ:網ですか、ああ、難しや、難しやの世界に入ってきましたね。

    歌樽先生:では、ヒントをだしましょう。

    17問:「네 길거리:四辻」と関連の最も深いものを次の中から選びましょう。

    1) 線    2) 四角 3) 三角 4) 点

    詩子アナ:それは簡単です。「市井」の「井」とも関連があり、これ以外には考えられません。

    17問:2)の四角、です。

    歌樽先生:そうですね。

    18問:では「오후의 네 길거리 해가 들었다」とイメージ的に最も近いのは次のどれですか。

    1) 線と    2) 四角と四角 3)三角と四角 4) 点と四角

    詩子アナ:おおよその見当がついてきましたが、その先がどうなっているのかが気になります。

    歌樽先生:この問題で何か見通しらしきものがついてきたようですね。

    詩子アナ:ハングルに三角があったのですか。

    歌樽先生:昔はありました。今はこの「△(반시옷(半シオッ)」の音が無くなっています。

    詩子アナ:いろんな音があったんですね。「해가 들었다」の「해:太陽」はハングルでは「・」で表していますので、

    18問:答は、4)点と四角、です。サイコロの1のようなイメージです。

    歌樽先生:なるほど。なかなかいいイメージができたようですね。

    詩子アナ:そう褒められても、歯がゆいのですが、このイメージと独立門との関連を連想によって結び付けるという方向がぼんやりと見えてきましたが。

    歌樽先生:では、独立門についての問題を出してみましょう。

    19問:移転前の独立門のあったところには以前別の門がありました。それは何門でしょうか。

    • 1) 入城門(입성문): 城に入る門         
    • 2) 出城門(출성문): 城から出る門
    • 3) 肅靖門(숙정문): 四大門の1つの北門  
    • 4) 迎恩門(영은문): 中国の使者を迎える門 

    詩子アナ:四大門は南大門、東大門、西大門に北大門ですか。

    歌樽先生:四大門は本来は숭례문(崇禮門)、흥인지문(興仁之門)、돈의문(敦義門)、숙정문(肅靖門)と呼ばれていましたね。

    詩子アナ:独立門のあったところはソウルの北というより西側のようですから、分かりました。

    19問:答は4) 迎恩門(영은문)です。

    歌樽先生:正解です。

  • ハングルの詩のある風景: 素月と凧揚げ 第12回

    詩子アナ:まず、詩を確認してみます。

    1行目 오후(午后)의 네 길거리 해가 들었다.   

    2行目 시정(市井)의 첫겨울의 적막(寂寞)함이여, 

    3行目 우둑히 문어귀에 혼자 섰으면,      

    4行目 흰 눈의 잎사귀, 지연(紙鳶)이 뜬다.   

     1行目の「네 길거리」は平面的ですし、2行目の「市井」は街のことですし、建物に焦点を当てたようには見えませんし、3行目の「문어귀」は「門」自体ではなく、その入り口部分のようですし、4行目の「紙鳶」は凧で、これも立体というより、平面的と言えそうですから、立体的なものを探すのは難しいですね。

    歌樽先生:そこをもう少し考えてみましょう。

    詩子アナ:これ以上、ヒントをいただくのも申し訳ありませんし、もうひと踏ん張りですね。

    歌樽先生:何か見えてきましたか。

    詩子アナ:ここは「独立独歩」「独立独行」でやらなければ。あっ! 光が見えました!

    16問:答は3行目です。「独立門」が浮かびました。

    歌樽先生:それはどういう流れですか。

    詩子アナ:「문어귀」は「門」、「혼자 섰으면」は「独り立てれば」と読めば、「独立」で「혼자」の前の「문어귀」の「門」と合わせれば、「独立門」になります。

    歌樽先生:なるほど、よく見つけましたね。

    詩子アナ:「連想」とおっしゃっていたのは、こういうことでしたか。素月が願っていたのは1897年の中国からの独立を記念した「独立門」ではなく、日本の支配からの「独立」ではないのですか。

    歌樽先生:日本からの独立を意味することがすぐに分かるようではまずいですね。

    詩子アナ:「独立」を願ってはいけないのですか。

    歌樽先生:「独立」を願うことは日本の支配に反対することですから、すぐに逮捕されてしまいます。

    詩子アナ:そんなに怖かったのですか。

    歌樽先生:自由に思うことが言えるようになったのはつい最近のことですからね。

    詩子アナ:それで「혼자 섰으면」と表現することで、連想力のある人には「独立したい」という気持ちを語っていることが分かるようにしたんですね。

    歌樽先生:連想力がしっかり付いてきましたね。

    詩子アナ:こういうのは「言外に匂わせる」ことなんでしょうか。

    歌樽先生:言外でも言内でも「匂わせる」という意図が分かってしまえば、もうおしまいですね。

    詩子アナ:では、これまで誰も気が付かなかったんですか。

    歌樽先生:気が付かなかったでしょうね。

  • ハングルの詩のある風景: 素月と凧揚げ 第11回

    歌樽先生:「面」で何か思いあたるものがありますか。

    詩子アナ:面といえば、凧に使う紙ですか。「방패연(防牌鳶)」は四角い形ですし。

    歌樽先生:いいところを突いていますね。

    15問:では、「面」か「四角い形」と関連のあるものを探してみましょう。

    詩子アナ:そういえば、「口」の形は「国」を表すんでしたね。(「제비 つばめ 10」参照

    歌樽先生:思い出しましたか。

    詩子アナ:これで、もう怖いものなしです。

    歌樽先生:急に元気が出てきたようですね。

    詩子アナ:はい、やります! やれます! やり切ります!

    15問:「午后」の後ろの「后」の4画から6画の「口」、「市井」の「井」にできる「□」の形、それに「寂寞(적막:せきばく)」の「寞」の中の「日」に「口」の形があります。

    歌樽先生:いろいろ探し出してきましたね。

    詩子アナ:いえ、いえ。まだあります。「紙鳶」の「紙」の「氏」の中に「四角」があります。

    歌樽先生:それは、なんともいえませんね。

    詩子アナ:やりすぎ、やりいか、やりほうだいになっていますが。

    歌樽先生:詩子アナは「いか」ではなく、あちこちで「引っ張りだこ」のようですから、もうここは自由にやってください。

    詩子アナ:では、お言葉に甘えさせていただきます。漢字ではなくてハングルですが、「寂寞함」の「함」にパッチムの「ㅁ(ミウム)」があります。それから、「문어구」の「문」ですが、これは「문자연(門字鳶)」(第9回の図)を連想させます。初声には同じく「ㅁ(ミウム)」があります。

    これまでのことを整理すると、「네 길거리」の「四辻」の「線関連」では、「凧」の「骨組み」や「構造」、「口(くち)」や「ㅁ(ミウム)」の「面関連」では「凧」の本体を連想っせるだけでなく、「国」の暗示もしています。初めに先生がおっしゃったようにずいぶん回り道をしてきた気がします。

    歌樽先生:確かに回り道をしてきましたが、本当の回り道はこれからなんです。では、この勢いで、どんどん行きましょう。

    詩子アナ:これからが本当の回り道ですか。あの、ここで少し休んでもいいですか。友達に何をしているか、ちょっとメールしてみます。

    歌樽先生 :さっきの香織さん、沙織さん、詩織さんですか?

    詩子アナ:はい。友達の名前、覚えてもらえたようですね。みんな喜ぶと思います。

    歌樽先生:顔は知りませんが、名前を覚えただけで喜んでもらえるとは嬉しいことですね。昔は花子、春子、明子など子供の子の字の付く名前が多かったのですが、これも時代の移り変わりの一つなんでしょうね。

    詩子アナ:両親が名前を付ける場合と祖父母が名前を付ける場合とではやはり違いがあるようですよ。私は祖父に名前を付けてもらったようです。「線」と「面」の次は「立体」ですか?

    歌樽先生:何か思い当たるものはありますか。

    詩子アナ:全くゼロです。凧が浮かんでいる姿しか浮かびません。

    歌樽先生:揚がった凧に何を望んでいたでしょうか。

    詩子アナ:凧に望むものですか。厄除けを願う「送厄迎福」がありましたね。

    歌樽先生:それは旧暦の1月15日の年中行事としての凧揚げですね。

    詩子アナ:何かヒントらしきものがあれば嬉しいですね。

    歌樽先生:では、こんなヒントはいかがでしょうか。

    16問:この詩の中で立体的なものは次のどの行にあるでしょうか。

    1)1行目    2)2行目 3)3行目 4)4行目

    詩子アナ:なるほど、何行目かに立体が隠れているという訳ですね。

    歌樽先生:これで分かったようですね。

  • ハングルの詩のある風景: 素月と凧揚げ 第10回

    詩子アナ:漢字表記も入っているんですね。4行詩の中に4つの漢字熟語があるというのは、素月の詩としては少し多いような気がしますが。これも連想と関連がありますか。

    歌樽先生:すべてが関連があります。ずいぶん遠回りをしましたが、これで準備ができたようです。まず、第1段階として、「네 길거리:四辻、十字路」との関連を考えてみましょう。

    詩子アナ:第1段階ということは、何段階かあるんですね。

    歌樽先生:そうですね。第一段階と言ってもいいし、線・面・立体という視点からすると、まずは線から考えようということなんですが、この辺りが難しいところなんです。

    詩子アナ:分かりました。覚悟します。

    歌樽先生:では、線をポイントにして考えてみましょう。

    14問:「네 길거리」と関連のあるものを探してみましょう。

    詩子アナ:「네 길거리:四辻、十字路」との関連ということで、線がクロスしているところに着目して、漢字の字画に「十」またはそれに似たものを探してみます。

    では、詩をもう一度見てみます。

    지연(紙鳶) 漢字
    午后의 네 길거리 해가 들었다. 午后(오후)
    市井의 첫겨울의 寂寞함이여,市井(시정) 寂寞(적막)
    우둑히 문어귀에 혼자 섰으면,
    흰 눈의 잎사귀, 紙鳶이 뜬다.  紙鳶(지연)

    14問:「午后」の「午」、「市井」の「市」は縦横がクロスして、「十」の形になっています。「寂」や「紙」には「十」があるといえばあるし、無理だと言われれば無理のような気もします。少し不安なところもあるのですが。

    歌樽先生:なかなか鋭いところを探し出しましたね。確かに、「紙」の右側の「氏」の三画目と四画目は四辻のように見えますね。「鳶」の「弋(しきがまえ):ヨク」も見方によっては四辻と言えますね。

    詩子アナ:先生にもそう見えますか。良かった!

    歌樽先生:実は、紙には異体字があるのです。

    詩子アナ:異体字というのは、同じ意味の別の漢字ですか。

    歌樽先生:そうです。「紙」は「帋」で「氏+巾」の形です。漢字だけでなく仮名の場合も標準字体以外のものを指します。

    詩子アナ:「帋」の文字に「巾」が入っていますね。「寂」にも異体字があるのですか。

    歌樽先生:探せばいろいろと出てきますよ。ウ冠の下の「叔」の字には右のような異体字が使われています。

    詩子アナ:では「紙」にも「寂」にも「十」が使われている訳ですね。これで「四辻」になりますね。あの、「凧」という文字にも四辻がありますね。

    歌樽先生:「凧」は国字ですね。実は「辻」も国字で、日本で作られた漢字ですね。見方にもよりますが、漢字ですから、縦棒と横棒が交わっていれば「十」の字になるものが多いのは事実ですね。

    詩子アナ:はあ、なるほど、そういうことですか。「네 길거리:四辻」が「凧」の縦横の竹ひごに現れていますね。縦横とたすき掛けのダブル四辻ですね。それに、ハングルは縦線、横線、丸で作られていますが、線がぶつかっている形はあっても、縦線と横線が交差する文字の形はありませんね。

    歌樽先生:では、次に進みましょう。

    詩子アナ:線の後は面ですね。

  • ハングルの詩のある風景: 素月と凧揚げ 第9回

    歌樽先生:なかなか良い推理ですね。では、「방패연」の構造を見ておきましょう。

    詩子アナ:人体の名称がいろいろなところに使われていますね。「귀:耳、머리:頭、 허리:腰、목:首」。分かりました。

    12問:人体の部位と同じ名称は、1) の귀( 耳 )です。食パンの耳とよく似た言い方ですね。凧の真ん中の穴は何ですか。それから「門」の文字の凧は何と言いうのですか。

    歌樽先生:真ん中の穴は「방구멍」、「門」の字を書いた凧は「字凧」の一つで「문자연:門字鳶」といいます。

    13問:では、この真ん中の穴の役割は次の内どれでしょうか。

    1)凧糸をしっかり取り付けるため    2)風の強弱に合わせて凧の姿勢を調節するため

    3)凧の重さを少しでも軽減するため   4)風がいくら弱くても凧を上昇させるため 

    詩子アナ:役割があって凧の真ん中を空けてあるんですね。

    歌樽先生:中央に穴が空いている四角い凧を「방구멍연(穴あき凧)」と呼ぶこともあります。

    詩子アナ:それだけ「穴」の役割が大きいということなんでしょうね。1)の凧糸の取り付けは、穴のあるなしに関係なくできますし、穴を空けたところの紙の部分だけでは、3)の重さの軽減にはならないでしょうから、2)か4)だと思います。副詞があるのは要注意という経験からいえば、答がでてきます。ということで、

    13問:答は、2)風の強弱に合わせて凧の姿勢を調節するため、です。

    歌樽先生:正解です。子供用の凧作りの動画を見ておきましょう。

    詩子アナ:今回はキーとなるハングルを「네 길거리」と「혼자 섰으면」の二ついただきましたが、これは「네 길거리」と「혼자 섰으면」が深い関係にあるということでしょうか?

    歌樽先生:関係があるといえば全て関係がありますね。

    詩子アナ:関係があるのは音韻とか意味とかでしょうか。     

    歌樽先生:音韻と意味だけでなく、今回は連想という要素についても考えてみましょう。

    詩子アナ:連想というと連想ゲームのようなものですか。

    歌樽先生:ゲームではありませんが、イメージや音や形、意味、漢字表記などの何らかの類似性を連想といっていいでしょう。

  • ハングルの詩のある風景: 素月と凧揚げ 第8回

    詩子アナ:どれも魚の名前のようですね。

    歌樽先生:よく分かりましたね。1)광어「ヒラメ」、2)가자미は「カレイ」、3)홍어は「ガンギエイ」、4)가오리は「エイ」です。

    詩子アナ:「左ヒラメに、右カレイ」でしたっけ?

    歌樽先生:そう言われていますね。ヒラメとカレイは形がよく似ていますから、見分けるために誰かが考え出したんでしょう。例外もあるようですが、ずいぶん有名な言葉になりましたね。

    詩子アナ: 「홍어(ガンギエイ)」と「가오리(エイ)」はどちらも「エイ」のようですが、こちらも似ているのですか。

    歌樽先生:よく似ています。「홍어」の方が「가오리」よりも値が張るようです。

    詩子アナ:では、気合を少し入れて!

    歌樽先生:「홍어」ですか。

    詩子アナ:いえ、気合を入れつつ、入れ過ぎないように。

    10問:答は、4)の가오리연、ということでお願いします。「カオリ」という名前の駅があったようですし、それに「カオリ」の音の響きがいいので。

    歌樽先生:そういえば、詩子さんのお友達に香織さんがいますね。

    詩子アナ:ええ、元気いっぱいのお友達です。香織さんだけでなく、沙織さんも詩織さんもいますが。

    歌樽先生:折々に、紹介などしていただくことにして、「가오리연」、正解です。

    11問:では、四角い形の凧を何と呼ぶでしょうか。

     1) 방패연   2)네모연 3)사각연 4)방형연

    詩子アナ:漢字で書けるものがありますか。

    歌樽先生:1)は「防牌鳶」、2)は漢字はありませんが「4つの角の鳶」、3)は「四角鳶」、4)は「方形鳶」、こんな感じですが。

    詩子アナ:こちらも何か生き物の名前かと思っていましたが、全て四角関連の名前ですね。

    歌樽先生:全てと言われても困りますが。正解は一つですので。

    詩子アナ:はい。分かりました。

     11問:答は、1)방패연(防牌鳶)です。

    歌樽先生:正解です。「방패」というのは「盾(たて)」のことです。

    12問:뱡패연の構造ですが、各部位に人体の名称が付けられているものがいくつかあります。では、凧の部位の名称で実際に使われているのは次の内どれでしょうか。

    1) 귀( 耳 )  2) 팔( 腕 )  3) 눈( 目 )   4) 배( 腹 ) 

    詩子アナ:四角い形ですから、「팔(腕)」や「 눈( 目 )」ではないように思えます。

  • ハングルの詩のある風景: 素月と凧揚 第7回                     

    詩子アナ:羽子板は中央の両端に、羽根は空の中ほどにたしかにありますね。「凧揚げ」と「羽根突き」ですから、童謡の「お正月」の歌詞と全く同じですね。

    歌樽先生:遠くに富士山、手前に門松、江戸城のお堀には水鳥も描かれていますね。

    詩子アナ:池のように見えるのは江戸城のお堀ですか。なるほど、立派な石垣もありますね。

    詩子アナ:韓国にも「お正月」や「凧揚げ」の歌がありますか。

    歌樽先生:「お正月」の歌で最も有名なのは「까치까치 설날은」で始まる「설날」という歌です。

    까치까치 설날은 – 윤극영 작요 작곡/김치경 노래 – Bing video

    詩子アナ:童謡のなかの童謡という感じの歌ですね。金素月はこの歌を歌っていたのですか。

    歌樽先生:この歌は1924年に尹克榮が作詞・作曲したもので、素月は1902年生まれですから、子供の頃にはこの歌はありませんでした。

    詩子アナ:凧揚げの歌はどうですか。

    歌樽先生: 1989年に創作童謡大賞に「연 날리기(凧揚げ)」が選ばれてから、この歌がよく歌われていますね。では、聴いてみましょう。

    연 날리기 – 권연순 작사 한수성 작곡 안선호 고유정 노래 – Bing video

    詩子アナ:明るく元気に凧揚げしている様子がよく出ている歌ですね。これも新しい歌ですから、素月の時代にはなかったんですね。上の浮世絵では奴凧の足が覗いていますが、素月は当時、どんな形の凧を揚げたのですか。

    歌樽先生:当時の凧は四角い形の凧と菱形の凧が代表的なものです。

    10問:菱形の形の凧を何と呼ぶでしょうか。

    1) 광어연    2)가자미연 3)홍어연 4)가오리연

  • ハングルの詩のある風景: 素月と凧揚げ 第6回                      

    詩子アナ:凧揚げはこうした年中行事と共に行われていたんですね。

    歌樽先生:そうですね。日本でも凧は「新年」や「春」の季語としても用いられていますよ。

    詩子アナ:どんな俳句ですか。

    歌樽先生:では、こんな問題を出してみましょう。

    第9問:次の句の中で最も古い句はどれでしょう。

    1) 凧上(あげ)てゆるりとしたる小村哉(かな)  2) 小き子の小き凧を揚げて居る

    3) 白紙(しらかみ)の小ひさき凧を上げてゐる  4) 凧ひとつ浮ぶ小さな村の上

    詩子アナ:どれも「小さい」という意味の語が用いられていますね。

    歌樽先生:正岡子規や小林一茶は凧の句を山ほど詠んでいて、選ぶのが難しいんですが、ここでは「小」の字の付いたものを選んでみました。

    詩子アナ:「凧揚げ」が生活の中にしっかり根付いていたんですね。

    歌樽先生:そうですね。新年の句としてよく出てきますね。

    詩子アナ: お正月の句と考えると、句のイメージがずっと具体的になってきました。

    歌樽先生:それはいいことですね。理解が深まっている証拠です。

    詩子アナ:理解が深まっているかどうか分かりませんが、

    第9問:答は、1)の「凧上(あげ)てゆるりとしたる小村哉(かな)」です。

    歌樽先生:正解です。1)は小林一茶 (1763-1827)、2)は正岡子規(1867-1902)、3)は原田浜人(1884-1972)、4)は飯田龍太(1920-2007)の句です。

    詩子アナ:イメージがどこか素月の詩の「紙鳶」と繋がっているような気もしますが。これは「凧」の持つイメージがそのような感じを持たせるのでしょうか?

    歌樽先生:凧の句の全てがそうだとは言えませんね。切り取った風景や凧に持たせるイメージの違いによって違った句になりますから。

    詩子アナ:1)と4)は「村」に、2)と3)は凧揚げしている人に焦点が当てられているように感じます。

    歌樽先生:一茶の別の句ですが、「凧(たこ)抱いたなりですやすや寝たりけり」「凧(いかのぼり)青葉を出(いで)つ入(いり)つ哉(かな)」、子規の「子を抱いて巨燵(こたつ)に凧を揚げる人」「風に乗る姿は軽(かろ)し鳳巾(いかのぼり)」などは上の4つの句とは全く違ったイメージの句になっていますね。

    詩子アナ:素月の「紙鳶」もイメージの把握が大切だということのようですね。

    歌樽先生:「紙鳶」だけでなく、その詩の姿がそこに見えますからね。

    詩子アナ:一見、淡い風景画のような詩に見えるのですが、そうではないのですか。

    歌樽先生:そのあたりは後でゆっくり見ていきましょう。

    詩子アナ:そういえば、「お正月には凧あげてこまをまわして遊びましょう」という童謡もあまり聴かなくなりましたね。

    歌樽先生:では、久しぶりに聴いてみましょう。東(ひがし)くめ作詞、滝廉太郎作曲、明治34年(1901)発表の歌、「お正月」です。

    1)もういくつねると お正月    お正月には 凧あげて

    コマを回して遊びましょう   早くはやく来い来いお正月がつ

    2)もういくつねると お正月    お正月しょうがつには まりついて

    おいばねついて 遊びましょう  早く来い来い お正月

    童謡・唱歌 ― お正月 ― 全11曲 – Bing video

    詩子アナ:羽根つきのことを「追羽根(おいばね)」といっていたんですね。

    歌樽先生:そうですね。当時のお正月の代表的なものといえば、男の子の遊びの「独楽(こま)回し」と「凧揚げ」、女の子の遊びの「鞠(まり)突き」と「羽子(はね)突き」でしたね。独楽は手に載せたり、ぶつけ合ったりして遊んでいましたね。広重の浮世絵のa)(第3回)をよく見ると、「羽根突き」の羽子板と羽根が描かれていますよ。

    詩子アナ:そうですか。気が付きませんでした。

    歌樽先生:では、少し大きくしてもう一度見てみましょう。

  • ハングルと詩のある風景: 素月と凧揚げ 第5回

    詩子アナ:参考になる絵か写真のようなものがあればうれしいのですが。

    歌樽先生:では、日本の喧嘩凧祭りの様子を見ておきましょう。

    詩子アナ:これは大変なお祭りですね。相手に糸を切られないようにしなくてはいけませんね。

    第7問:答は3)切れにくさ、です。

    歌樽先生:正解です。切れると凧が落ちるか、飛んで行ってしまいますからね。切れにくくしたり、相手の凧糸を切るために糸にガラスや剃刀の刃のようなものを膠(にかわ)で塗り付けることもあったようですが、最近は鉄粉を糸に塗り付ける方法も取られているようです。

    詩子アナ:凧を揚げるというのは大変なことなんですね。

    歌樽先生:「けんか凧」は「끊어먹기:凧糸切り」というのですが、喧嘩凧は特に大変ですね。

    詩子アナ:ほかに凧揚げについて何か書かれていますか。

    歌樽先生:厄除けのための凧揚げ行事の説明があります。

    第8問:では、この行事は陰暦の何月に行われるでしょうか。

    1)1月  2)2月  3)3月  4)4月

    詩子アナ:陰暦の1月にする行事はたくさんありますね。

    歌樽先生:1月は特に多いですね。旧正月を祝うだけでなく、15日は「대보름(大満月)」ですから、「지신밟기(地神踏み)」「달맞(月見)」「다리밟이(橋踏み)」など行事満載です。

    詩子アナ:先ほどの凧揚げの民俗画では雪が降っている景色が多かったので、1月か2月なんだと思いますが、毎月のように行事があるのですか。

    歌樽先生:そうですね。陰暦で行われるのですが、年中行事ですから、毎月のように何かしらありますね。

    詩子アナ:では、1月に追加ということで、

    第8問:答は1)の1月です。「쥐불놀이(ネズミ追い火)」もこの頃ですし。空き缶に穴を開けて、中に火を入れて、ぐるぐる回すのをよく見ましたし。

    歌樽先生:正解です。「쥐불놀이(ネズミ追い火)」の様子と凧の厄除けの文字もみておきましょう。

    https://www.culturecontent.com/content/contentView.do?content_id=cp020501100001&print=Y
    https://ameblo.jp/seoultour/entry-11172054889.html

    詩子アナ:凧の厄除け文字は「送厄迎福」と書くんですね。どう読むのですか。

    歌樽先生:「송액영복」と読みます。「재액소멸(災厄消滅)」と書くこともあります。

    詩子アナ:「쥐불놀이(ネズミ追い火)」で使う空き缶は昔からあったのですか。

    歌樽先生:昔はありませんでした。米軍経由のもので、朝鮮戦争(1950-1953)の後からのようですから、素月の時代は空き缶を使うことはなかったようですね。以前は旧暦のお正月の最初の「子(ね)」に当たる日にネズミを追い払うために田畑のあぜ道に火をつける民俗行事の一つでした。その後、陰暦の1月15日にすることが多くなったようです。

  • ハングルの詩のある風景: 素月と凧揚げ 第4回

    詩子アナ:満年齢ですか、数え年ですか。

    歌樽先生:当時も今も年齢は数え年が普通ですね。

    詩子アナ:小学校に入る頃には凧揚げをやっているでしょうから、、、

    第4問:答は2)の5歳~7歳、です。

    歌樽先生:残念でした。

    詩子アナ:残念ですか。では、、、

    第4問:答えは4)の10歳以上です。

    歌樽先生:残念でした。

    詩子アナ:残念!では、、、

    詩子アナ:残念さは変わりませんが、かしこまりました。最後の選択肢で、

    第4問答えは3)の8歳~9歳、です。

    歌樽先生:残念でした。選択肢が一つ残っていますが。

    第4問:答えは1)4歳以下、です。

    数え年で4歳は満では3歳ということですから、これは初めから選択肢からは外していました。満3歳で凧揚げとは驚きです。

    歌樽先生:素月の叔母の桂熙永著の『私の育てた素月』(章文閣 1969)に書かれていますね。

    詩子アナ:どんな風に書かれているのですか。

    歌樽先生:「素月はこうして4歳の時から凧を揚げ、誰よりも凧を高く揚げた」(P40)

    詩子アナ:数えの4歳は満では3歳ですね。3歳の子が一人で凧を揚げるのは大変だったでしょうね。

    歌樽先生:凧揚げをかなり力を入れて習ったようなのですが、そのあたりを見ていきましょう。

    第5問:素月は誰から凧揚げを習ったでしょうか。

    1)父親  2)兄  3)祖父  4)祖母

    詩子アナ:凧揚げは習わなくても、やっているうちにできるようになるとは思いますが、幼いですから、誰かから教わった方が安心ですね。

    第5問:答えは、3)の祖父、です。

    歌樽先生:正解です。ちなみに素月は長男ですから、お兄さんはいません。

    詩子アナ:お祖母さんが教えることはないでしょうし、お父さんは病気がちだったようですから。

    歌樽先生:推理力が戻ってきましたね。

    詩子アナ:まだまだです。力を入れて習ったというのは、ただならぬ感じがしますが。

    歌樽先生:それには糸が関連しているようですね。凧糸を引いたり緩めたりと、力の入れ方が大切ですからね。『私の育てた素月』に祖父が凧揚げを素月に教えたこと、そして、凧糸がとても貴重だったことが書かれています。

    第6問:では、凧糸は誰が用意してくれたのでしょうか。

    1)父親  2)母親  3)祖父  4)祖母

    詩子アナ:凧糸は買えばいいんじゃないんでしょうか。

    歌樽先生:当時は今のように凧糸用の糸を簡単に買える時代ではなかったようですよ。

    詩子アナ:ということは、糸を紡ぐのですか。

    歌樽先生:凧糸を紡ぐだけでなく、糸ができた後に特殊な加工も必要になりますからね。

    詩子アナ:高く揚げるにはずいぶん長い糸が必要になるでしょうし、分かりました。

    第6問:答えは、4)の祖母、です。

    祖父が凧揚げを教えるのですから、糸は祖母という組み合わせがピッタリです。

    歌樽先生:ピッタリかどうかはあまり関係がありませんが、正解です。このころの子供たちは凧糸を作るのにセーターとかソックスのようなものの繊維を解いて使っていたようですよ。

    詩子アナ:そうなんですか。凧の糸に特殊な加工が必要だというのはどういうことですか。

    歌樽先生:では、これを問題にしてみましょう。

    第7問:凧糸が特殊なのは糸に何が必要だからでしょうか。

    1)長さ  2)太さ  3)切れにくさ  4)しなやかさ