Category: ハングルの詩のある風景
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ハングルの詩のある風景: 失題の秘密 第5回 詩子アナ:素月は文系の方だとばかり思っていましたが、理系の勉強もしっかりできたんですね。 歌樽先生:物理の点数は95点、化学98点ですから、文系・理系ともに秀才タイプだったといっていいでしょうね。 [図] 詩子アナ:目次にあるタイトルの順番の「7番目」だけが対象であれば三角関数とは関係がなさそうですから、まず4)は除外してみます。それから幾何も違うでしょうから、算術か代数ということでしょうか。 歌樽先生:そうですね。「7番目」ということに関してだけ言えば、それほど難しくはありませんから、数学のことを持ち出さなくてもいいような気もします。ただ、素月が数学的な思考には慣れていたようですね。 詩子アナ:「7番目」と数学的思考を結び付ければいいようですね。ということは、この問題、「サイン、コサイン、単位ゲット!」できました。 第7問:答は2)の「代数」です。 歌樽先生:サインとヒントが多すぎましたね。では、「7番目」と第7問の答の「代数」を結び付けてみてください。 詩子アナ:これだけでは、お手上げです。なにかもう一つヒントをいただければありがたいのですが。 歌樽先生:では、ヒントを問題の形で出しましょう。 第8問:「7番目」と最も関連の深いものは次の内どれでしょうか。 1)1910年8月29日 2)1919年2月8日 3)1919年3月1日 4)1923年9月1日 詩子アナ:年月日ですか。1)の「1910年8月29日」は「日韓併合」、3)の「1919年3月1日」は「3.1運動」、4)の「1923年9月1日」は「関東大震災」、2)の「1919年2月8日」は何かありましたね。 歌樽先生:東京で朝鮮の独立を宣言をした日ですね、「宣言書」の内容は今も残っていますよ。 http://www.ayc0208.org/2_8/index.php 詩子アナ:代数が関係するということですから、なにか計算をするんでしょうか。 歌樽先生:そのように考えていくと、答が見つかるでしょう。 詩子アナ:単なる数字合わせという訳ではないということですね。いただきました! 歌樽先生:さすが、詩子アナですね。
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ハングルの詩のある風景: 失題の秘密 第4回 歌樽先生:素月の成績表の写しで確認しておきましょう。 詩子アナ:姓名は「金廷湜」、住所は平北道(平安北道)の定州郭山面で、番地がありません。 [図] 歌樽先生:生年月日の欄には明治33年とだけ書かれてありますね。素月は子規の亡くなった1902年の9月に生まれていますから、年号で言えば「明治35年」でなければならないのです。 詩子アナ:2年の差って大きいんじゃないんですか。 歌樽先生:大きいといえば大きいのですが、2-3年の違いは珍しくありません。出生届けが遅れたり、届け出をだすのを忘れたり、誤記したり、いろんな理由があったようですね。 詩子アナ:そういう時代だったのですね。数学は「幾何」が90点、「三角」98点ということですから、とてもよくできていましたね。 歌樽先生:こんな点数が取れれば文句ありませんね。 詩子アナ:この点数には驚きです。「朝鮮語及漢文」が73点で意外と低いですね。 歌樽先生:でも、国語の「漢文講読」は98点ですよ。国語というのは日本語のことですから、日本式の「漢文講読」の方がよく身についていたのでしょう。 詩子アナ:数学と「7番目」というのは何か関係があるのですか。 歌樽先生:数学の知識と関連がありますね。では、それを問題にしましょう。 第7問:その数学の知識とは次の内、どれでしょうか。 1)算術 2)代数 3)幾何 4)三角関数 詩子アナ:数学はもうずいぶん前に習ったことなので、幾何も代数も微分も積分も集合も、あとなにがありましたっけ。ああ、確率というのがありましたね。ともかくすべて完璧といっていいほど忘れてしまっています。 歌樽先生:それでも科目名をよく覚えていますね。これはただものではないと見ましたが。 詩子アナ:いえいえ、そんなことはありません。 歌樽先生:三角関数はどうですか? 詩子アナ:「サイン、コサイン、単位ゲット!」。 歌樽先生:タンジェントではなくて、「単位ゲット」ですか。意味がよく分かりませんが。 詩子アナ:三角関数がよくできれば単位がもらえるというギャグです。 歌樽先生:そんなギャグが流行っているんですか? 詩子アナ:「サイン、コサイン、コンセント!」とか「サイン、コサイン、プレゼント!」とか。 歌樽先生:もうついていけません。
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ハングルの詩のある風景: 失題の秘密 第3回 詩子アナ:そうなんですね。誰が開封したかということですが、叔母さんではないでしょうから、 第5問:答は3)のお祖父さん、だと思われます。 歌樽先生:正解です。お祖父さんは素月が幼いころとてもかわいがっていたようですしね。 詩子アナ:あの、そろそろ「キーとなるハングル」をいただければ嬉しいのですが。 歌樽先生:ハングルではありませんが、「キーとなる語」をこのあたりで挙げておきましょう。 詩子アナ:はい、そのほうが助かります。 歌樽先生:「キーとなる語」は「失題」です。 詩子アナ:「失題」はこの詩のタイトルですよね。先ほど、第1問でやりましたが、これがキーとなるんですか。 歌樽先生:そうですね。「キー」といえばこれでしょう。この詩は謎が多くて、実はどこから話せばいいのか分からないほどなんです。 詩子アナ:金素月は謎をかけるのが上手だったんですか。 歌樽先生:謎かけが上手とか下手とかいう問題ではないのですが、ではこの謎を考えてみましょう。 第6問:「失題」というタイトルの2つのうち、初めの方の詩は詩集『진달래꽃(つつじの花)』の中の何番目の詩でしょうか。 詩子アナ:目次を見てみます。あの「失題」、ありました。 第6問:「7番目」です。1「먼後日」、2「풀따기」、3「바다」、4「山위에서」、5「옛이야기」、6「님의노래」、7「失題」となっています。綴り方が今とは違っていますが。 [図] 歌樽先生:4番目のタイトルは目次では「山우헤서」となっていますが、本文では「山우헤」とだけ書いてあって「서」がありません。ところで、この「7番目」にはどんな意味があるでしょうか? 詩子アナ:「7番目」の意味ですか? ラッキーセブンということはないですよね。 歌樽先生:それはありませんね。ラッキーセブンといえば野球ですね。 詩子アナ:当時、野球はあったのですか。 歌樽先生:ありましたね。正岡子規は野球が好きで、広めていたようです。子規は1902年に亡くなっています。関東大震災の21年前ですね。上野公園の「正岡子規記念球場」に「春風やまりを投げたき草の原」という句碑があります。 詩子アナ:そんなに昔から野球があったとは知りませんでした。 歌樽先生:詩子アナは数学が得意でしたっけ。 詩子アナ:得意というわけではありませんが。 歌樽先生:素月は数学が得意でしたか? 詩子アナ:得意だったように記憶していますが。 歌樽先生:以前、成績表を見たことがありましたね。 詩子アナ:はい。どの科目もかなり優秀だったようですが。
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ハングルの詩のある風景: 失題の秘密 第2回 詩子アナ:「夕日」の歌といえば「ぎんぎんぎらぎら」のあの歌ですか。 歌樽先生:そうです。「ぎんぎんぎらぎら夕日がしずむ。ぎんぎんぎらぎら日がしずむ。」 作詞は葛原しげる、 作曲は室崎琴月です。 詩子アナ:この歌は1番だけなら、私、歌えますよ。 https://www.uta-net.com/movie/46401/ 歌樽先生:よく知っていますね。 詩子アナ:幼稚園で習いましたから。金素月と何かしら関連があるとしたらという仮定のもとに考えてみます。素月の生きていたのは、1902~1934年ですから、1)か2)ですね。 歌樽先生:なかなか鋭い推測ですね。 詩子アナ:いえいえ、これで鋭いといわれては困ります。素月の詩集『진달래꽃』が出版されたのは1925年ですから、何かしら関連付けるのであれば、それ以前ということになりますね。 第2問:答は1)1920年頃です。 歌樽先生:正解です。「夕日」という歌と当時の様子がわかる記事がありますよ。レコードの発売は1921年です。 詩子アナ:関東大震災はその2年後ですから、復興にも明るい歌が求められたのでしょうね。ところで、素月と関東大震災は何か関係があるのですか。 歌樽先生:では、そのあたりを見ておきましょう。 第3問:関東大震災の時、素月はどこにいたでしょうか。 1)ソウル 2)平安北道の郭山(素月の故郷) 3)大阪 4)東京 詩子アナ:関東大震災は1923年ですから、素月が21歳のときですね。素月は日本で学んだことがあるようですから、分かりました。 第3問:答は4)の東京です。 歌樽先生:そうですね。地震のあった時は東京にいましたね。 詩子アナ:関東大震災を経験したのですね。地震のニュースは素月の故郷にも伝わったのですか。 歌樽先生:大震災でしたからすぐに伝わったようですよ。ところが、大変なことが起こりました。 第4問:その大変なこととはなんでしょうか。 1)素月の下宿の家賃が3倍になった。 2)素月は大阪に避難した。 3)震災死亡者欄に素月の本名の「김정식」が載った。 4)素月が官憲に捕まった。 詩子アナ:どれであっても心配ですね。素月は無事だったのですか。 歌樽先生:無事でした。素月から無事だという手紙が実家に届いています。 詩子アナ:ニュースだと3)か4)で、個人の話なら1)か2)ということでしょうか。ショッキングなのは3)か4)でしょうね。官憲に捕まったとしてもすぐには連絡がこないでしょうから、分かりました。 第4問:答は3)の震災死亡者欄に素月の本名の「김정식」が載った、です。 歌樽先生:正解です。素月の叔母の桂熙永さんは『私が育てた素月』(章文閣:1969)の中で、素月のお母さんは毎日泣いていて、素月からの手紙が届いても、息子は亡くなったとばかり思って、しばらく開封もせず、喜ぶこともなかったと書いています。 第5問:では、だれが開封したのでしょうか。。 1)父親 2)母親 3)お祖父さん 4)叔母さん 詩子アナ:父親か母親かというのが普通だと思われますが、、、 歌樽先生:父親は素月が小さいころ、日本人の鉄道敷設工事人夫から暴行を受け、それ以来精神に異常をきたしたと言われています。 詩子アナ:これは、尋常ではないことが起きましたね。開封したのが父親でも母親でもないとすると、お祖父さんか叔母さんという訳ですね。金素月の家庭環境を知っておくことも詩の理解には必要でしょうね。 歌樽先生:そうですね。当時の時代背景の理解も必要ですよ。
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ハングルの詩のある風景: 失題の秘密 第1回 ナレーター:詩には風景があります。それぞれの詩にどんな風景があるのか想像してみると、その詩の姿がはっきりと浮かび上がってまいります。今回のハングルの詩はどんな風景のどんな詩なのでしょうか。 独断と偏見でお馴染みの歌樽先生が詩のある風景の現場にすでに到着なさっているようです。では、現地の詩子アナウンサーを呼んでみましょう。詩子アナ、現地の模様はいかがでしょうか。 詩子アナ:はい、こちら詩子です。ずいぶん遠くまでやって来ましたが、現地はそろそろ夕日が沈もうとしています。観光客がどんどん丘に登って行きます。潮風が下から吹いてきます。子供達も手を引かれて登っていきます。船も港に帰ってきています。では、歌樽先生に伺ってみましょう。今回の詩のキーとなるハングルはずばり何でしょうか。 歌樽先生:ずばーり、、、難しいですね。 詩子アナ:そこのところを何とかお願いします。 歌樽先生:今回ばかりは何ともならないのです。 詩子アナ:ということは「キーとなるハングル」の指摘が難しいということですか。 歌樽先生:その通りです。 詩子アナ:えっ? 素月は「ハングル」で詩を書いていますよね。 歌樽先生:詩はもちろんハングルで書いていますよ。 詩子アナ:それなら、何とか「ずばーり」お願いしたいのですが、、、 歌樽先生:それが、実は一筋縄では行かないんです。 詩子アナ:それは大変ですね。 歌樽先生:その理由を考えてみてください。 詩子アナ:「キーとなるハングルが多すぎる」 歌樽先生:そうではありません。 詩子アナ:「キーとなるハングルが飛び石連休状態である」 歌樽先生:そうではありません。 詩子アナ:「すべてが関連している蜘蛛の巣状態である」 歌樽先生:そうではありません。 詩子アナ:「キーとなるハングルが行間にある」 歌樽先生:なかなか鋭い所を突いてきましたね。行間には文字がありませんよ。では、まずこの詩のタイトルから入りましょう。 第1問:この詩のタイトルは次の内どれでしょうか。 1)無題 2)有題 3)失題 4)兼題 詩子アナ:これは以前どこかで見たような気がしますが。 歌樽先生:金素月の詩で同じタイトルを持つ詩が「제비:つばめ」という詩ともう一つありましたね。 詩子アナ:思い出しました。 第1問:答は3)失題です。 確か、二つの内の一つはこんな詩でしたね。 동무들 보십시오 해가 집니다 みんなごらんよ 陽が沈む 해지고 오늘날은 가노랍나다 沈めば 今日とお別れさ 웃옷을 잽시빨리 입으십시오 何か羽織って さあ早く 우리도 산마루로 올라갑니다 僕らもお山に 登ろうよ もう一つの方の失題はどんな詩ですか。 歌樽先生:これがなかなか手ごわいんです。失題という詩にはいろんな秘密が隠されているのですが、それについてこれからゆっくり考えてみることにしましょう。…
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歌樽先生:つまり、日本の統治下にある「忍耐」の時期であることが背景になっている詩であるという認識ですね。 詩子アナ:はい。「楽天」では「가지:枝」が風が泣く対象になっていますが、「樹芽」では「가지:枝」では枝ごとに「芽」が出ているので、「希望」見える詩だと、こんな風に思いました。 歌樽先生:これで「설다해도」の内容が掴めてきましたね。 詩子アナ:そんな気がします。 歌樽先生:イメージとしてこの二つの詩が繋がっていると考えれば理解しやすいですね。では、 第20問:「설다해도」とは何に対して「설다」と言っているのでしょうか。 詩子アナ:ここがポイントですたね。では、やってみます。 第20問:①日本が韓国を支配していたという時代的背景に対して ②したいことができない社会的環境に対して ③豊かな生活とは程遠い経済環境に対して ④不遇な家庭環境に対して ⑤もろもろの不条理・不満に対して 言いたいのに言えない重層的状況がこのような詩になったのではないかと思いました。 歌樽先生:当時は検閲が厳しかったですから、書きたいことが書けなかったというのは、日常茶飯事の時代でしたね。 詩子アナ:大変な時代だったのですね。 歌樽先生:おさえるべき所はおさえられているようですから、こうした観点を生かして「樹芽」を訳詩してみましょう。 詩子アナ:はい。気を引き締めて訳詩してみます。 樹芽 설다해도 웬만한, 봄이안이어, 나무도 가지마다 눈을터서라! 木の芽 憂うも まずは 春は春 木々も枝先ごとに芽が! 歌樽先生:なかなか新しい訳になりましたね。 詩子アナ:希望が見えるような訳になればと思いまして。 歌樽先生:「樹芽(수아)」を逆にすると「아수(明日)」になりますしね。もっとも、素月が意識していたかどうかは分かりませんが。 詩子アナ:音韻のことは考えていないのですが。 歌樽先生:訳詩がしっかりしていれば、音韻はあとから付いてくるものですから、気にすることはありません。 詩子アナ:ああ、そう言っていただいて安心しました。 歌樽先生:この近くに鴨料理のおいしいお店がありますので、そちらに行ってみましょう。 詩子アナ:えっ!スンデ料理ではなく、オリ(鴨)料理ですか。 歌樽先生:やはり、折々の料理を楽しむことも必要ですからね。 詩子アナ:あの、折り入ってお願いがありますが。 歌樽先生:ええ、分かっていますよ。すっかりスンデ料理の虜になったようですね。スンデもありますから、心配はいりませんよ。予約もすんでおりますよ。 詩子アナ:スンデとオリですか、安心しました。
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詩子アナ:全部漢字のタイトルですね。「紙鳶」というのは何ですか。 歌樽先生:「紙凧(かみだこ)」のことです。 詩子アナ:紙凧には竹の枝が使われていますよね。 歌樽先生:使われているかも知れませんが、この詩では「가지:枝」は出てきません。 詩子アナ:「万里城」は「万里の長城」のことでしょうから、「枝」は無関係と考えると、「父母」でなければ「楽天」ということになるのですが・・・ 歌樽先生:どちらでしょうか? 詩子アナ:確率は50%ということにして、気楽にやります。 第18問:1)楽天(낙천)、です。 歌樽先生:内容的には楽天的とは言い難いですね。読んでみましょう。 詩子アナ: <楽天:낙천> 살기에 이러한 세상이라고 맘을 그렇게나 먹어야지 살기에 이러한 세상이라고 꽃 지고 잎 진 가지에 바람이 운다. 歌樽先生:確かに「가지」がありますね。自由に訳してみましょう。 詩子アナ:少し時間が必要ですが。自由にということで、こんなふうに訳してみました。 楽天 それもこれも世の定め まことそうとも思わねば それもこれも世の定め 風も涙す裸木の枝 歌樽先生:直訳とはずいぶん違った訳詩になっていますね。何かヒントになったものがあるんですか。 詩子アナ:「살기에 이러한 세상이라고:(直訳)生きるにこんな世の中だと」ってなにかもっと言いたいに違いない感じがするんです。それで、これには何かあるのではないかと。 歌樽先生:何かありましたか。 詩子アナ:まず、「とかくに人の世は住みにくい」という夏目漱石の『草枕』の冒頭の部分を思い出しました。 歌樽先生:「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。」に続く部分ですね。それで? 詩子アナ:生きづらさが極限に達していることを言おうとしたのではないかと思いました。『草枕』の方は人の世の生きづらさ、「樹芽」の方は置かれた状況での生きづらさを指しているのではないかと、こんな風に理解しました。 歌樽先生:「置かれた状況での生きづらさ」に思い至ったのはどういう理由からですか。 詩子アナ:「꽃 지고 잎 진 가지에 바람이 운다.(直訳:花が散り葉の落ちた枝に風が泣く)」と言う表現が「人」中心ではないように思えましたから。 歌樽先生:なるほど。表現上はそうかも知れませんが、人を詠っている点では変りありませんよ。 詩子アナ:はい。分かりました。あの、ここで問題を自分で作ってみましたが、いいでしょうか。 歌樽先生:もちろん構いませんよ。 詩子アナ:では、お言葉に甘えて、問題です。 第19問:この詩は次のうち、どんな内容の詩でしょうか。 1)断念 2)忍耐 3)希望 4)転落…
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詩子アナ:そう言われても、心の準備が必要です。「웬만한, 봄이안이어,」と言える理由は「나무도 가지마다 눈을터서라!」にあるので、そのことを、もう一度取上げて「내가슴에도 봄이와서 지금 눈을 트랴고하여라.」と言わなくてもいいようにしたのはどの語句かということですか。 歌樽先生:正解です。 詩子アナ:答を言っていないのに正解でいいのですか。 歌樽先生:詩とは流れも大切で、この流れからすると、もう正解以外は考えられません。 詩子アナ:ヤッター! 久しぶりにいい気持ちです。 第17問:答えは、2)の「설은봄」を「설다해도」に変更、です。 歌樽先生:もう少し説明できますか。 詩子アナ:もうこうなったら何でも来い!という心境です。恐いくらいです。 歌樽先生:これは大変なことになってきましたね。 詩子アナ:「樹芽」の詩のキーワードが「설다 해도」だったことを忘れかけていました。これで謎が解けました。危なかった! 歌樽先生:謎かけをしようとは思いませんが。 詩子アナ:まず、1)の「웬만한」の位置変更ですが、これは「웬만한,설다해도」という語順は成立しません。つまり、この位置変更が主ではなく、他の要因によって位置の変更をせざるを得なくなったものだと考えます。こうした理由で1)ではないことが分かりました。次に3)「봄은 아니여」の「봄이안이어」への変更ですが、「春じゃないか」という基本的な意味に変わりありませんので、これが「旧樹芽」の最後の2行を削除した理由になるとは思えません。4)「나무가지」の「나무도」への変更は「나무가지 가지마다」の2つの「가지」を嫌ったもののようです。 歌樽先生:消去法できましたか。 詩子アナ:「설다해도」でなければならない理由があるんです。 歌樽先生:では、それを聞きましょう。 詩子アナ:「旧樹芽」の「설은봄」では「설은」は「봄」を修飾しているので、「春」と自分との関係がはっきりしていません。そこで、自分と春とのかかわりを「내가슴에도 봄이와서」と書いているのですが、「설다해도」とすると、この「해도」の中に自分との関係が出てくるので、「내가슴에도 봄이와서」という部分が不要になるので、次の「지금 눈을 트랴고하여라.」ももちろん要らなくなったという訳です。 歌樽先生:ずいぶん自信を持っていますね。 詩子アナ:分かってくると自信が出てきました。 歌樽先生:では、どこに推敲の余地があったのでしょうか。 詩子アナ:「내가슴에도 봄이와서、(直訳:私の胸にも春が来て)」という表現形式が古いと感じたからではないでしょうか。 歌樽先生:第9問の答「a) わが胸に春訪れぬ 今まさに芽を吹かんとす。」、「b) わが心にも春来り 芽は今まさに出でんとす。」と試訳したところですね。なぜ、古いのでしょうか。 詩子アナ:「내가슴에도」という表現で自然と自身との関係を単純に結びつけてしまうという古典的な方法から脱出したかったからではないかという気がします。 歌樽先生:なるほど、ずいぶん深くなりましたね。 詩子アナ:詩が精錬所を通って、純なものになったといった感じがします。 歌樽先生:もうすっかり詩人の域に達していますね。精錬所を通って、純なものになったというその感じは、素月自身が感じていたかもしれませんね。「설다해도」には「恨(ハン)」といわれる内容が含まれていると思われますから、ここを訳出することができればいいですね。 詩子アナ:この詩の理解に参考になる他の詩はありますか。 歌樽先生:参考になる他の詩ですか。では、こんな問題を出しましょう。 第18問:同じ金素月の詩集『진달래꽃』の中に「가지:枝」のあるものは次のどれでしょうか。 1)楽天(낙천) 2)父母(부모) 3)万里城(만리성) 4)紙鳶(지연)
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詩子アナ:孟浩然は中国の人ですから、「春暁」のハングルの訳詩があれば、答えは1)か3)ですね。「春暁」を金億先生がすでになさっていると仮定すると、同じ詩をまた弟子の金素月が訳して発表することはまずないと思われますので、2)か4)でしょうが、『꽃다발』というタイトルからすると、もう答えはこれしかありません。 第14問:答えは4)の 朝鮮女流詩人のみの漢詩です。 歌樽先生:正解です。『꽃다발』は朝鮮の女流詩人の漢詩をハングル訳したもので、中国の漢詩は含まれていません。伝統的な「時調」という詩のジャンルがあるのですが、金億はこのジャンルでの訳も試みています。金億も漢文調を残したままの訳だけでは満足できず、独自の訳を試みる必要性を感じたのでしょう。 詩子アナ:では一つの朝鮮の女流詩人の漢詩を2つの異なったやり方で訳を付けたのですか。 歌樽先生:そうです。全ての漢詩に2つのやり方で訳詩を付けているんです。そこが偉いですね。 詩子アナ:こうした訳に対して反対とか批判とかそういうものはなかったのでしょうか。 歌樽先生:それはありましたね。金億自身も玄相允先生から訳詩について「どうして原詩の訳だといえるのか」と批判されたことを本の巻頭辞で書いています。 詩子アナ:玄相允先生とは誰ですか。 歌樽先生:一言では説明しにくいのですが、学部は早稲田の英文科で学び、後に高麗大学校の初代総長になっている人です。 詩子アナ:そういう方ですか。ともかく金素月は金億先生の自由な訳に惹かれたんですね。 歌樽先生:そうですね。そういう面もあったとは思いますが、素月からすると、さらなる自由が必要だと考えていたようです。 詩子アナ:さらなる自由というと、「時調」の枠も超えたような詩ということですか。 歌樽先生:なかなかの達観ですね。 詩子アナ:いえいえ、「時調」についてはよく分かりませんが、それを超えた方向ではないかという直感が働いたものですから。 歌樽先生:詩の理解にはそういう直感も必要ですよ。 詩子アナ:金億先生はどこの学校を出られたのですか。 歌樽先生:慶応義塾大学の英文科のようですよ。 詩子アナ:「樹芽」の詩のキーワードは確か「설다 해도」でしたよね。 歌樽先生:そうでしたね。そろそろ本題に戻りましょう。ここでもう一度「旧樹芽」と「新樹芽」とを比べてみましょう。 詩子アナ:はい。もう一度みてみます。 旧樹芽 新樹芽 웬만한 설은봄은 아니여! 설다해도 웬만한, 봄이안이어, 나무가지 가지마다 눈을텃서라, 나무도 가지마다 눈을터서라! 내가슴에도 봄이와서 (該当なし) 지금 눈을 트랴고하여라. (該当なし) 歌樽先生:「旧樹芽」も「新樹芽」も同じ4行なのに、「旧樹芽」の後半部の2行が無くなったのはなぜでしょうか。 詩子アナ:これはまた難しいことを訊かれてしまいました。「旧樹芽」の「설은 봄」の「설은」の活用はどうなっているんですか。 歌樽先生:今度は難しい質問がこちらに飛んできましたね。では、これを問題にしましょう。 第15問:次の中で詩中の「설은 봄」の「설은」と最も関連のないものはどれでしょうか。 1) 섧다 2) 서럽다 3)…
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詩子アナ:分かりました。「うたこ」は1)です。 歌樽先生:冴えてきましたね。 詩子アナ:いろいろとヒントをいただいて、第11問は分かりました。 第13問:答えは1)です。 歌樽先生:その心は? 詩子アナ:「ココロ」だからです。カ行の音がありますから。 歌樽先生:正解!これで、第10問にずいぶん近づきましたよ。 詩子アナ:では、「カ行音」をヒントにこつこつとやってみます。 아침도 모르고 설잠을 자노라면 귓가에서 지저귀는 새소리 어젯밤 뒤설닌 바람비에 꽃 잎사귀는 얼마나 떨엿노 第3行目だけが「カ行」がありません。 歌樽先生:ということは? 詩子アナ:これは行単位でみると3つの行にカ行があり、1つの行にはない訳ですから、「2種3同」のタイプと見ることができます。 歌樽先生:そのように見ることもできますが、実はさきほどの井伏鱒二の訳と比べると面白いですよ。 原文「春暁」孟浩然 春眠不覚暁 ハルノネザメノウツツデ聞ケバ 処処聞啼鳥 トリノナクネデ目ガサメマシタ 夜来風雨声 ヨルノアラシニ雨マジリ 花落知多少 散ツタ木ノ花イカホドバカリ 詩子アナ:3行目にはどちらもカ行の音がないんですね。答が後先になりましたが、 第12問:答えは3)の第3行目です。 어젯밤 뒤설닌 바람비에 ヨルノアラシニ雨マジリ 金素月の訳と井伏鱒二の訳は何か関係があるのですか。 歌樽先生:関係はないでしょう。金素月の訳は1925年4月13日の『東亜日報』が初出で、井伏鱒二の訳の初出は1933年10月『文学界』(文化公論社)「田園記」とのことですから。どちらにもカ行の音がないのは偶然でしょう。ただ、新しい思想に接するという時代的背景の中で漢文調の訳だけでは満足できず、独自の訳を試みる必要性を強く感じはじめたのだと思われます。なぜ3行目に、井伏の訳にも素月の訳にも「カ行」の音がないのかは、このことと関係があるように思われます。 詩子アナ:「不覚暁(あかつきをおぼえず)」、「聞啼鳥(ていちょうをきく)」、「風雨声(ふううのこゑ)」、「花落知(はなおちることしる)」といった書き下し文ではどうしてもこの詩の場合「カ行」音がでてきますが、訳の方針をまったく変えたために3行目に「カ行」音がなくなったということですか。 歌樽先生:基本的にはそうだと言っていいでしょう。 詩子アナ:素月は誰の漢詩のハングル訳も参考にしないで訳詩をしたのでしょうか。 歌樽先生:一人では難しかったでしょうね。素月の師匠の金億先生は『꽃다발』(花束)という題で漢詩をハングル訳したものを1944年にだされています。この中には1910年代から訳詩なさったものもあって、恐らく素月にも参考にするように見せたのでしょう。 詩子アナ:孟浩然の「春暁」は金億先生の本には含まれていないのですか。 歌樽先生:では、これを問題にしましょう。 第14問: 金億の『꽃다발』という訳詩集に含まれる原詩の漢詩は次の内どれでしょうか。 1)中国の漢詩 2)朝鮮の漢詩 3)中国と朝鮮の漢詩 4)朝鮮女流詩人のみの漢詩






