ハングルの詩のある風景: 素月と鉄橋 第10回

詩子アナ:いえ、いえ、少々おまちください。Aの二行目は「넘어오니: 越えてきたので」で、Bの方は「건너서서: 渡って立ち」ですから、これははっきり違いますね。目がちかちかしますが、わかりました。先ほどいただいたキーとなるハングルをすっかり忘れていました。もう、大丈夫です。

第10問:3)「얼결에」の後ろです。Aは「뛰어」、Bは「띄워」でよく似ていますが、違います。

歌樽先生:では、「띄워」の原形はなんでしょうか。

詩子アナ:ノーヒントは少しきついですね。

歌樽先生:ではこうしましょう。

第11問:「띄워」はある語の使役形ですが、その語は次のうちどれでしょうか。

1)띄다  2)띠다  3)뛰다  4)뜨다

詩子アナ:これはもう辞書の力を借りなくては。

歌樽先生:ええ、どんどん借りてください。

詩子アナ:まず、意味から、「띄다:目に付く」「띠다:帯びる」「뛰다:走る」「뜨다:浮く」ですから、これらの使役形を探せばいい訳ですよね。やっと燃えてきました。

歌樽先生:そうですね。燃えてくればすぐに分かりますよ。ここでユンシネさんの「열애(熱愛)」を聴いてみましょう。

열애 – 윤시내(1982.08.14) [가요 힛트쏭] | Yoon Si-nae [K-Pop Legend] – YouTube

詩子アナ:何度聴いても、「♪ 태워도 태워도 ♪」のところが胸にジーンと来ますね。

歌樽先生:正解が見えてきたようですね。

詩子アナ:はい。お陰様で。

第11問:答は4)뜨다です。「뜨다」の使役形は「뜨+이우+다」で「띄우다」です。

歌樽先生:よく分かりましたね。

詩子アナ:「燃えてくればすぐに分かりますよ」のヒントで分かりました。「타다:燃える」の使役形は「태우다:燃やす」で、「타+이우+다」となっていますから。

歌樽先生:じつはこの「띄워:浮かせて、浮かべて」が見かけは「뛰어:走って、駆けて」とよくにていて、Bの12月26日発行の詩集『진달래꽃』のこの詩では「띄워」となっていますが、これをAの『東亜日報』 (1925.1.1)に発表された「뛰어」と理解しているものも見受けられるくらいです。例えば崇文社『素月詩集 진달래꽃』(1951)でも「뛰어」を取っています。

詩子アナ:ところで、今回のキーとなるハングルは紆余曲折はありましたが、얼결에」ということでしたね。どんな意味ですか。

歌樽先生:「얼결에」は「얼떨결에」の形で使われることが多いのですが、辞書には「うっかり、どさくさまぎれに」などの訳がついています。「つい、思わず、なにがなんだか分からないうちに」といった訳がピッタリな場合もあります。

詩子アナ:日本語にはなかなか訳しづらい語のようですね。

歌樽先生:訳語というのはその語のもつ一部の意味や用法を表しているので、完全ではありませんね。例えば、私もよく「うっかり」寝過ごしたり、寝違えてしまったりすることがありますが、こういう時は「얼떨결에」とは言いません。「얼떨결에」には、自分の思いや意志が入っていません。ですから、失敗したりうまく行かなかったといったニュアンスもありません。

詩子アナ:言葉というのは難しいですね。

歌樽先生:それもそうですが、実は当時はとても難しい時代でしたね。

詩子アナ:何かあったのですか。

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