ハングルの詩のある風景: 素月と凧揚げ 第6回                      

詩子アナ:凧揚げはこうした年中行事と共に行われていたんですね。

歌樽先生:そうですね。日本でも凧は「新年」や「春」の季語としても用いられていますよ。

詩子アナ:どんな俳句ですか。

歌樽先生:では、こんな問題を出してみましょう。

第9問:次の句の中で最も古い句はどれでしょう。

1) 凧上(あげ)てゆるりとしたる小村哉(かな)  2) 小き子の小き凧を揚げて居る

3) 白紙(しらかみ)の小ひさき凧を上げてゐる  4) 凧ひとつ浮ぶ小さな村の上

詩子アナ:どれも「小さい」という意味の語が用いられていますね。

歌樽先生:正岡子規や小林一茶は凧の句を山ほど詠んでいて、選ぶのが難しいんですが、ここでは「小」の字の付いたものを選んでみました。

詩子アナ:「凧揚げ」が生活の中にしっかり根付いていたんですね。

歌樽先生:そうですね。新年の句としてよく出てきますね。

詩子アナ: お正月の句と考えると、句のイメージがずっと具体的になってきました。

歌樽先生:それはいいことですね。理解が深まっている証拠です。

詩子アナ:理解が深まっているかどうか分かりませんが、

第9問:答は、1)の「凧上(あげ)てゆるりとしたる小村哉(かな)」です。

歌樽先生:正解です。1)は小林一茶 (1763-1827)、2)は正岡子規(1867-1902)、3)は原田浜人(1884-1972)、4)は飯田龍太(1920-2007)の句です。

詩子アナ:イメージがどこか素月の詩の「紙鳶」と繋がっているような気もしますが。これは「凧」の持つイメージがそのような感じを持たせるのでしょうか?

歌樽先生:凧の句の全てがそうだとは言えませんね。切り取った風景や凧に持たせるイメージの違いによって違った句になりますから。

詩子アナ:1)と4)は「村」に、2)と3)は凧揚げしている人に焦点が当てられているように感じます。

歌樽先生:一茶の別の句ですが、「凧(たこ)抱いたなりですやすや寝たりけり」「凧(いかのぼり)青葉を出(いで)つ入(いり)つ哉(かな)」、子規の「子を抱いて巨燵(こたつ)に凧を揚げる人」「風に乗る姿は軽(かろ)し鳳巾(いかのぼり)」などは上の4つの句とは全く違ったイメージの句になっていますね。

詩子アナ:素月の「紙鳶」もイメージの把握が大切だということのようですね。

歌樽先生:「紙鳶」だけでなく、その詩の姿がそこに見えますからね。

詩子アナ:一見、淡い風景画のような詩に見えるのですが、そうではないのですか。

歌樽先生:そのあたりは後でゆっくり見ていきましょう。

詩子アナ:そういえば、「お正月には凧あげてこまをまわして遊びましょう」という童謡もあまり聴かなくなりましたね。

歌樽先生:では、久しぶりに聴いてみましょう。東(ひがし)くめ作詞、滝廉太郎作曲、明治34年(1901)発表の歌、「お正月」です。

1)もういくつねると お正月    お正月には 凧あげて

コマを回して遊びましょう   早くはやく来い来いお正月がつ

2)もういくつねると お正月    お正月しょうがつには まりついて

おいばねついて 遊びましょう  早く来い来い お正月

童謡・唱歌 ― お正月 ― 全11曲 – Bing video

詩子アナ:羽根つきのことを「追羽根(おいばね)」といっていたんですね。

歌樽先生:そうですね。当時のお正月の代表的なものといえば、男の子の遊びの「独楽(こま)回し」と「凧揚げ」、女の子の遊びの「鞠(まり)突き」と「羽子(はね)突き」でしたね。独楽は手に載せたり、ぶつけ合ったりして遊んでいましたね。広重の浮世絵のa)(第3回)をよく見ると、「羽根突き」の羽子板と羽根が描かれていますよ。

詩子アナ:そうですか。気が付きませんでした。

歌樽先生:では、少し大きくしてもう一度見てみましょう。

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