紙上中継「ハングルの詩のある風景」素月と無主空山 第3回
詩子アナ:久しぶりに「鋭い」といわれて、気分上々です!
歌樽先生:原文そのものかどうかの確認は難しいところもあるのですが、「冬至書房」から1969年に出された安田保雄編の『海潮音』原詩集(『海潮音』所版別冊)にはこの詩の原文とその英訳詩が添えられています。(別冊 p. 48)

詩子アナ:ということは「故国」というタイトルは原文にはないということですね。
歌樽先生:さらに鋭くなってきましたね。
第3問:上田敏が「故国」というタイトルを付けた理由を整理してみましょう。
ちなみに、原文のタイトルは詩の第一行目と同じで、英訳の「Every little bird loves its nest.」にあたり、オック語での原語のタイトルでは「TOUT AUCELOUN AMO SOU NIS」となっています。
詩子アナ:オック語ですか。調べてみます。「すべての小鳥は自らの巣を愛す」と出て来ました。
歌樽先生:オック語の訳ですか。スマホの力はすごいですね。
詩子アナ:第3問の答ですが、こんな感じでいかがでしょう。
第3問:上田敏が詩人オオバネルの最も主張したかった故国復興の願いを代弁したかったから。
歌樽先生:そうですね。当時、オオバネルはミストラル(1830-1914)と共にプロヴァバンス語とフランス南部の郷土文学の復興に尽力しました。ミストラルはノーベル賞も受賞しています。
詩子アナ:そのあたりの事情を上田敏は知っていたのですか。
歌樽先生:それはよく知っていたと思われます。非常に気を配って翻訳にあたっていますから。『海潮音』の訳詩だけでなく注の部分も見ておくといいですね。

詩子アナ:はい、分かりました。素月は詩の中で「祖国」という語は使っていないのですか。
歌樽先生:素月の詩はたくさんありますが、それらの詩の中には「祖国(조국)」とか「故国(고국)」という語は見つかりません。
詩子アナ:「祖国」を叫ぶことが許されない時代に素月は生きていたんですね。この詩は祖国が奪われた悲しみを詠っていて、男女関係といった内容ではありませんから、第1問の4つの選択肢のうちの一つの「つばめ」は消えました。
歌樽先生:どういう推理の組み立てをしようとしているのですか。
詩子アナ:私流の推理では、第1問は生物3つ、無生物1つということで、生物かそうでないかの2択、生物を選べば、鳥か蟻か、つまり天か地かという2択、天を選べばツバメかミミズクかの2択となって、いずれも2択の問題と言う風に考えられるのですが、ツバメは無しとしましたので、相方のミミズクも無く、天か地かも無くなれば、結果は自ずと、、、
歌樽先生:全く無意味な推理ですが、正しい答えが出てくることはよくありますから、不思議ですね。
詩子アナ:では、その不思議というお言葉に甘えまーす!「推理は単純明快に」という私の座右の銘に従って、やってみます。
第1問:答は、4)萬里城(만리성:万里城)です。
歌樽先生:内容を知らないでも答えられるというのは問題の出し方がよくないからかも知れませんね。
詩子アナ:ということは、正解ですか。
歌樽先生:大正解です。
詩子アナ:ヤッター。久しぶりに大歓声が聞こえるようです。でも、なぜ 萬里城 なんですか。
歌樽先生:これには深い深い事情があるのですが、それは後でゆっくり考えることにして、その前に第2問を済ませておきましょう。
詩子アナ:日本語の「若いツバメ」に最も近い言葉を選ぶ問題ですね。
第2問:答は、3)제비족(つばめ族)です。
歌樽先生:これを選んだ理由はなんですか。
詩子アナ:大きな社会問題となったということですから、「若いつばめ」はひとりふたりではなく、多数であることをしっかり示す言葉が適切ではないかと思いました。つまり、少数か多数かという二択法という訳です。
歌樽先生:なるほど、薬で言えば、二択は万能薬ですね。大正解です。
詩子アナ:万能ではありません。それは正解した時だけで、そうでない場合の方が多いんです。
歌樽先生:では、「無主空山」の中の他の詩をチェックしておきましょう。
詩子アナ:「無主空山」の正確な意味は何ですか。
歌樽先生:正確な意味を探るよりも、どういう概念を含んでいるのかを考えた方がいいですね。
詩子アナ:「나의 金億씨에게。: 私の金億氏に。」という前書きは関連があるのですか。
歌樽先生:ありますね。これは文章になっていますね。最後に「。」が付いていますから。








