• 紙上中継「ハングルの詩のある風景」素月と無主空山 第9回

    歌樽先生:正解です。京都にはいろんなしきたりがあるようですね。

    詩子アナ:「風呂敷包を渡す」のが「もうそろそろお引き取りください」、「ぶぶ漬でも」というのは単なる外交上の挨拶で、なにもなければ寂しいので、言ってみているだけだそうです。

    歌樽先生:では、次に3行目の「쌓았다 헐었다」の入った諺を調べてみましょう。

    詩子アナ:こんな諺がでてきました。

    • 담을 쌓았다 헐었다 한다
    • 垣根を積み上げたり崩したりする

    歌樽先生:どんな説明がありますか。

    詩子アナ:「ああしてみたりこうしてみたりといろいろいい方法がないかやってみる」とあります。

    歌樽先生:では、最後の4行目の「만리성(萬里城)」を調べてみましょう。

    詩子アナ:「하룻밤」のところにもありました。

    • 하룻밤을 자도 만리성을 쌓는다
    • 一晩寝ても万里城を築く(直訳)

    歌樽先生:「만리장성:万里城」についても調べてみましょう。

    第12問:その中で最も驚いたものを選びましょう。

    詩子アナ:辞書にはいろんな説明が出ていますね。

    • ①万里の長城、2700km。
    • ②互いに行き来できなくする大きな障壁を比喩的にいう言葉。
    • ③前途洋々たる様を比喩的にいう言葉。

    第12問:ありました。

    ④男女が互いに交わることを比喩的にいう言葉。

    歌樽先生:驚いたようですね。

    詩子アナ:出て来ましたね、デターというデーターが出て来ましたね。④ですか。それで「万里城」が男女の関係を匂わせるような言葉となっているんですね。驚きました‼

    歌樽先生:驚くのはこれからですよ。

    詩子アナ:えっ!これで十分驚いていますが。

    歌樽先生:では、もっと驚いていただくことにして、次にいきましょう。

    詩子アナ:どうして一晩で万里城を築城することになるのですか。

    歌樽先生:一晩で万里城を築くというのではなく、万里城を築城する仕事をさせられるはめに陥るという意味です。話が込み入っていますので、箇条書きにしてみましょう。

    • ①妻の夫が万里城の築城に徴発される。
    • ②家に夫が長期にわたり帰って来ない。
    • ③塩売りの行商人がこの家にやってくる。
    • ④妻は男に言い寄られる。

    詩子アナ:話が微妙な世界に入ってきましたね。

    歌樽先生:③の塩売りの行商人の部分は隣家の未婚の男、または小作人という説もあります。

    詩子アナ:いくつかバージョンがあるようですね。

    歌樽先生:昔話のようなものですから、バリエーションも多いですね。

    詩子アナ:それだけ有名な話なんですね。

    歌樽先生:説話ですから、時代と共に変化していきますね。では、話を進めましょう。

    • ⑤妻は条件付きで男と一夜を共に過ごしてもよいと言う。
    • ⑥その条件とは男が夫のいる万里城まで出向いて夫に手紙と服を渡すこと。
    • ⑦それをしてもらえると、男と生涯ともに過ごしても良いという。
    • ⑧男は承諾して、女と一夜を共にし、翌朝、万里城に向かう。
    • ⑨何日もかけて築城の現場に到着し、妻の夫に会う。
    • ⑩男は事情をしたためた妻の手紙と服を夫に渡す。
    • ⑪夫は妻に手紙を書く間だけ、男に夫の代わりに城壁づくりに加わるように頼む。
    • ⑫夫は妻の手紙を読み、服を着替えて外に出て、帰宅する。

    詩子アナ:男はその手紙を読むことはできなかったのですか。

    歌樽先生:男は文字が読めなかったとされています。

    詩子アナ:夫への妻の手紙には何と書かれていたのですか。

    歌樽先生:妻がその男と一晩寝たこと、それが許せないなら万里城を作る仕事をそのまま続けてほしい、許してくれるなら、この服を着て、家に帰ってほしいといった内容のようです。

  • 紙上中継「ハングルの詩のある風景」素月と無主空山 第8回

    歌樽先生:誰かから教わりましたか。

    詩子アナ:教わった訳ではありませんが、いつかどこかでなんとなくといった感じでしょうか。

    第9問:正解は2)년です。映画かなにかでも聞いたような気がします。

    歌樽先生:こんな言葉を昔はよく聞きましたね。

    詩子アナ:あのー、ただならぬ気配が漂っていますが、大丈夫ですか。

    歌樽先生:辞書には「女性を卑しめていう言葉、あま」という説明がありますが、今は完全にアウトですね。

    詩子アナ:アウトかセーフかぎりぎりか、またはアウトに近いのはどんな言葉ですか。

    歌樽先生:それを聞かれるとは思っていませんでしたが。

    詩子アナ:難しいようであれば、あえてとはいいませんが。

    歌樽先生:そこまで言われると、、、ではこんな問題にしましょう。

    第10問:素月が詩集『진달래꽃』の中で使われている語は次の内どれでしょうか。

    1)년 2)계집 3)자식 4)녀석

    詩子アナ:この中のうち一つだけですか。

    歌樽先生:詩集『진달래꽃』の中で使われているのはこの内、一つだけです

    詩子アナ:強烈なパンチ級の言葉に比べると穏やかと言う感じがしますが。

    歌樽先生:詩集ですから、悪口を書くわけにはいきませんからね。

    詩子アナ:詩集『진달래꽃』を全部読んでみないと分かりませんが。

    歌樽先生:では、読んでからにしましょう。

    詩子アナ:あの、第8問がまだ終わっていませんが。

    歌樽先生:一つずつやって行けば第7問は自然にわかるでしょう。

    詩子アナ:一つずつですか?

    歌樽先生:何かまずいことでもありますか?

    詩子アナ:まずくはないのですが、、、あの、、第8問の答えが分かりました。

    第8問:答は4)の1から4行の全ての行です。

    歌樽先生:正解です。ヒントになりましたか。

    詩子アナ:はい、これ以上ない、とてもありがたいヒントでした。

    歌樽先生:ヒントだけで正解を出されると、何か置き去りにされている感じがするのですが。

    詩子アナ:一つずつやって行けばわかるというお言葉でしたので、2行目までは「あり」が確定していて、4行目は詩のタイトルの部分ですから、これも「あり」確定で、あとは3行目があるかどうかなんですが、3行目だけが「なし」の選択肢がありませんので、これは1~4行目までの全てではないかと推理しました。

    歌樽先生:なるほど、さすが、四択の女王と言われるだけありますね。では次に2行目の「 하룻밤」の「하룻밤」を用いた諺を探してみましょう。

    詩子アナ:「하룻밤」を用いた諺ですね。こんな諺がありました。

    하룻밤을 자도 헌 각시

    • ①一度使えばもう古いものとみなされる。
    • ②過ちを一度しただけで操を守った人とはみなされない。

    歌樽先生:現代からみるとなんともなじめない表現ですね。

    詩子アナ:こんなのもあります。

    • 봇짐을 내어 주면서 하룻밤 더 묵으라 한다
    • 風呂敷包みを渡しながらもう一晩泊まっていけという。

    歌樽先生:「봇짐을 내어 주며 앉아라 한다:風呂敷包を渡しながら座れという」という諺もこれと同じような意味です。

    第11問:この諺の意味は次の内どれでしょうか。

    • 1) ゆっくりして行ってください。
    • 2) 夕飯を食べてからお帰りください。
    • 3) そろそろお帰りください。
    • 4) お茶でもお出ししましょうか。

    詩子アナ:これは京都の「ぶぶ漬け(お茶漬け)でもどうどす?」と同じ香りがしますね。京都では実際にはお茶漬けはだしてもらえないようですし。

    第11問:3)そろそろお帰りください。

  • 紙上中継「ハングルの詩のある風景」素月と無主空山 第7回

    詩子アナ:独立運動をしている人たちにとって素月の詩は激励になったのでしょうか。

    歌樽先生:そのあたりはよく分かりません。直接激励になるようであれば、すぐに分かってしまい、逮捕されているでしょうから。

    詩子アナ:そうなんですか、少しの油断もできませんね。ところで、「万里城」はどんな詩ですか。

    歌樽先生:こんな詩です。

    萬里城(NO29)
    밤마다밤마다
    온하룻밤
    쌓았다헐었다
    긴萬里城!

    詩子アナ:「万里城」はもともと長いのに、なぜ「長い万里城」となっているのでしょうか。このあたりに何か秘密があるのですか?

    歌樽先生:百里、千里とくらべると「万里城」ですから、さらに長いわけですが、このあたりにも微妙な何かがありそうですね。

    詩子アナ:微妙な何かですか。見つけられるかどうか分かりませんが、7・5調で訳してみます。

    万里城 
    夜ごと夜ごとに
    夜もすがら
    積んで崩して
    万里城 

    歌樽先生:では、微妙な何かと関連して、こんな問題をやってみましょう。

    第8問:「万里城」という詩には諺によく使われる語句が入っています。それらはどの行に入っているでしょうか。

    • 1) 1行目だけ  
    • 2) 1行目と2行目  
    • 3) 1・2・3行目  
    • 4) 1~4行全ての行

    詩子アナ:一行目には諺に使われている語句が必ず入っているのですね。

    歌樽先生:そうですね。「밤마다: 夜ごと」という語句の入った諺がありますね。

    詩子アナ:では、ちょっと調べてみます。

    歌樽先生:諺は昔から言い伝えられてきたものですから、一面の真理のみを語ったものや教訓、風刺などウイットに富んだものもありますが、今の価値観からすると許されない表現もありますので、そのあたりは十分注意しましょう。

    詩子アナ:はい、わかりました。でてきました。

    아이 못 낳는 년이 밤마다 용꿈 꾼다

    歌樽先生:訳すとどうなりますか。

    詩子アナ:「子供の産めない女が夜ごと竜の夢を見る。」

    歌樽先生:何か説明がついていますか。

    詩子アナ:「実際には能力がないくせに荒唐無稽な思いだけをしている場合を比喩」とありますが。

    歌樽先生:竜の夢は一般に好まれるようですね。権力、幸運、長寿、富貴、成功などこれ以上ないよい夢とされていますね。

    詩子アナ:そういえば、「春香伝」の主人公の成春香(성춘향)の相手の名前は李龍夢(이용몽)でしたね。将来出世して、成功と幸運が約束されている名前という訳ですか。

    歌樽先生:そうとは言え、そこに至る過程でずいぶん苦労する姿が描かれています。特に春香の辛さは言葉では言い尽くせません。李龍夢が科挙に壮元(장원:首席)での合格後、南原に戻り、牢獄に入れられた春香を救い出し、最後はハッピーエンドになるのですが、二人が出会った時は互いに「二八青春:이팔청춘」でしたからね。

    詩子アナ:「二八青春:이팔청춘」ですか。

    歌樽先生:「2×8=16」で16歳ですね。ところで、さっきの諺には普通の会話では使えない言葉が入っていましたね。

    第9問:次の語のうち、会話での使用がNGなのはどれでしょうか。

    • 1) 아이   
    • 2) 년   
    • 3) 밤마다   
    • 4) 용꿈

    詩子アナ:使ってはいけない言葉だという認識のある語が一つあります。

  • 紙上中継「ハングルの詩のある風景」

    素月と「無主空山」 第6回

    歌樽先生:詩子アナ作であることは分かっています。ただ、AIで調べてみるとどうなるか、やってみましょう。

    詩子アナ:あのー、こんなことがあるのでしょうか。

    第6問:「加藤楸邨(かとうしゅうそん)」とでてきました。

    歌樽先生:検索機能によっては、他の俳人の名が出てくることも考えられますよ。ああ、ここですね。

    「梅が香を比べてみつつ高尾まで」

    https://share.google/aimode/JQLqP1ah6jwalRuNg

    詩子アナ:あのー、そんな立派な句ではないのに、名の知れた俳人の句とされたのはなぜでしょうか。

    歌樽先生:それはAIの機能の特殊性のためでしょう。

    詩子アナ:私の句だと主張することはできないのですか。

    歌樽先生:この句を詠むときに似たような句をいくつか作っていませんか。

    詩子アナ:はい、いくつか作ってみましたが。

    歌樽先生:では、それらの句の作者をAIに調べてもらいましょう。

    詩子アナ:はい、やってみます。えっ!

    「梅が香を探してけふは高尾まで」高浜虚子(たかはまきょし)

    「梅が香を求めてけふは高尾まで」山口青邨(やまぐちせいそん)

    「梅が香を比べ比べて高尾まで」松尾芭蕉(まつおばしょう)

    歌樽先生:すべて事実とは異なりますが、何度か調べているうちに回答の内容も変わってきますよ。

    詩子アナ:あり得ない!!

    歌樽先生:一言言えば、俳人の句の世界とこの「・・高尾まで」句はまったく異質ですから、間違えるAIのほうに根本的な問題があるのです。

    詩子アナ:異質さについてはAIは理解できないのでしょうか。

    歌樽先生:AIは真実に近そうなものを探しているだけで、真実かどうかに関しては全く無関心なのです。無関心ゆえに時には真実の場合もあるのですが、真実かどうかだけでなく、異質かどうかの判断も現在の機能ではできません。

    詩子アナ:私の句が誰か他の俳人の作と言われて、AIに対する不信感が増してきました。なにやら不穏な方向に行っているような気がしてならないのですが。

    歌樽先生:これは察しが早いですね。このままでは誰もが自分の作ったものだと証明することが難しくなってしまいますからね。

    詩子アナ:ミネルヴァのフクロウはもう飛び立っているのでしょうか。

    歌樽先生:すでに飛び立っているかもかも知れませんね。昨今の世相を見ると世界中に何百羽、何千羽と飛び回っているかも知れません。

    詩子アナ:ということは、黄昏時に飛び立つミネルヴァのフクロウと素月の詩の「夕べ窓辺に」来たミミズクは似たものと考えていいのですか。

    歌樽先生:似ていますね。そのためにもフクロウよりもミミズクのほうを選択したのだと思われます。

    詩子アナ:黄昏時にフクロウが飛び立つとどうなるのですか。

    歌樽先生:「時代の終焉と総括」とでも言えばいいでしょうか。

    詩子アナ:1925年とはどんな年でしたか?

    歌樽先生:朝鮮の独立との関連では1925年6月に独立運動の取り締まりを目的とした「三矢協定」が日本側の朝鮮総督府警務局長の「三矢宮松」と中国側の警務処処長の「于珍」との間で交わされたことが挙げられます。

    詩子アナ:取り締まりが厳しくなった訳ですね。

    歌樽先生:厳しくなりましたね。そのあたりは「素月と鉄橋第12回」で確認しておきましょう。

    詩子アナ:「時代の終焉と総括」の後はどうなるのですか。

    歌樽先生:ヘーゲル流に言えば「時代の終焉と総括」の兆候でしょう。つまり、今の時代が終わり、新たな時代が到来することになりますね。

    詩子アナ:ミミズクは明日の天気の話で出てきたのかと思っていましたが、そういう深い内容があったとは驚きです。フクロウが夕方にやってくればすぐに新しい時代が来るという期待があり、ワンクッション置いてミミズクにしたという素月の技巧で逮捕を逃れている訳ですね。

    歌樽先生:そうですね。フクロウが来ると言えば大変なことになりますからね。本命のフクロウは表に出さず、フクロウが脇役として控えているということなのでしょう。

    詩子アナ:実際にはフクロウは来ていないんですね。

    歌樽先生:その通りです。来てはいないのですが、来るという認識はしているのでしょう。

  • 紙上中継「ハングルの詩のある風景」

    素月と「無主空山」 第5回

    歌樽先生:この詩はハングルのリズムに合わせて訳してみましょう。

    부엉새(NO28) 

    간밤에 

    뒷 창(窓) 밖에 

    부엉새가 와서 울더니, 

    하루를 바다 위에 구름이 캄캄. 

    오늘도 해 못 보고 날이 저무네.

    詩子アナ:こんな風に訳詩してみました。

    ミミズク(ハングルのリズムに合わせての試訳)

    夕べ

    窓辺に

    ミミズクが来て啼き

    海にはひねもす黒雲が

    今日も陽は出ず日が暮れる。

    詩子アナ:「ミミズク」と「フクロウ」はよく似ていますね。

    歌樽先生:一般的には頭が丸いのがフクロウで、頭の両側に耳のような羽角(うかく)があるのがミミズクと言われています。映画「禁じられた遊び」にフクロウが出て来ますね。

    詩子アナ:映画は見ていませんが、ギターの音楽の「禁じられた遊び」は知っています。

    歌樽先生:映画の方もいいですよ。

    詩子アナ:この詩のタイトルは「ミミズク」ではなく「フクロウ」ではだめですか。

    歌樽先生:これはまたすごい角度から攻めてきましたね。

    詩子アナ:いえ、ただよく似ていて、どちらがどちらかよく分からないものですから。

    歌樽先生:なるほど。では、こんな問題を出してみましょう。

    第5問:フクロウかミミズクと最も関連の深い哲学者は誰でしょうか。

    1)ソクラテス(BC470-399)   2)デカルト(1596-1650) 

    3)カント(1724-1804)     4)ヘーゲル(1770-1831)

    詩子アナ:この方面は全く不案内ですが、素月が生きていた時代の人ではないようですね。

    歌樽先生:このうちの誰かと「フクロウ」か「ミミズク」をセットで検索すると、どういう流れか推察できますよ。

    詩子アナ:はあ、そういうことですか。

    歌樽先生:何か分かりましたか。

    詩子アナ:はい、出て来ました。

    第5問:答は4)ヘーゲル、です。ヘーゲルの著書『法の哲学』の序文にミネルヴァの梟(ふくろう)は迫り来る黄昏(たそがれ)に飛び立つ」とあります。

    歌樽先生:そうですね。ヘーゲルといえば弁証法とミネルヴァの梟が有名ですね。

    詩子アナ:ミネルヴァというのはローマ神話の女神でしたよね。

    歌樽先生:そうですね。「ミネルヴァの梟は知恵の象徴として知られています。

    詩子アナ:女神のミネルヴァの左手に乗っている像が梟なんですね

    歌樽先生:この詩と「無主空山」との関連はあとでゆっくり考えてみてください。

    詩子アナ:あとでゆっくりというのは、説明がすぐには難しいということですか。

    歌樽先生:難しいというよりも結論にいくまでの過程がやや複雑だからと言っておきましょう。

    詩子アナ:AIで調べられるといった類のものではないようですね。

    歌樽先生:そうですね。これからはAIに頼っていいものと頼ってはいけないものを知っておくことが一層重要になります。

    詩子アナ:えっ?そうなんですか。

    歌樽先生:疑うことが大切です。ではこんな問題をやってみましょう。

    第6問:「梅が香を比べてみつつ高尾まで」という句の作者をAIで調べてみましょう。

    1)水原秋櫻子(みずはらしゅうおうし)  2)加藤楸邨(かとうしゅうそん)

    3)飯田龍太(いいだりゅうた)      4)高野素十(たかのすじゅう)

    詩子アナ:あのー、私の句なんですけど。今日、お会いしてすぐにお話しましたが。

  • 紙上中継「ハングルの詩のある風景」素月と無主空山 第4回

    詩子アナ:「無主空山」の辞書的な意味では、「①人家も人気もない寂しい山、②持ち主のいない山」とありますが、この詩集ではもっと広い意味で使われているようですね。

    歌樽先生:いいところに気が付きましたね。では、そのあたりも考えながら、次の詩「개아미:蟻」を見ておきましょう。こんな詩です。

    개아미(NO26)
    진달래꽃이피고
    바람은버들가지에서울때,
    개아미는
    허리가늣한개아미는
    봄날의한나절, 오늘하루도
    고달피부지런히집을지어라.

    詩子アナ:では、今回は7音と5音で訳してみます。

    アリ
    ツツジの花は咲き誇り
    風はヤナギの枝で泣く
    アリはといえば
    腰細のアリはといえば
    春の日も日がな一日
    身を粉(こ)にしては巣を作る。

    歌樽先生:いろいろと考えた跡が分かる訳になっていますね。

    詩子アナ:ありがとうございます。この詩は不思議な香りがする詩ですね。

    歌樽先生:何かこの詩の心を捕まえたようですね。

    詩子アナ:まだまだです。何かを捕まえたいのですが、香りだけでなかなか掴みきれません。ここで何かヒントがあれば万々歳なのですが。

    歌樽先生:そう来ましたか。ではこんな問題はいかがでしょうか。

    第4問:二行目に「바람은버들가지에서울때:風は柳の枝で泣く時(直訳)」とありますが、風が泣くのはなぜでしょうか。

    1)春だから 2)つつじがきれいだから 3)戻る所がないから 4)風の本性だから

    詩子アナ:風が強く吹けば、泣くように聞こえることがありますから、風の本性のようにも思えますが、4択問題の解法の経験上、「それらしいものに正解無し」ですので、4)は除外します。

    歌樽先生:4択問題の「해결사(解決士)」の域に達していますね。

    詩子アナ:これは、どうもありがとうございます。1)の春はどことなく憂鬱な雰囲気があり、つつじがきれいで風が泣くという風景はなかなか情緒があるようにも感じますが、いまひとつピンとくるものがありません。

    歌樽先生:ピンと来ない理由は何でしょうか。

    詩子アナ:それは他に答があるからだと思います。

    歌樽先生:方向はしっかりしていますね。

    詩子アナ:いえ、まだまだですが。

    歌樽先生:出てますよ。

    詩子アナ:えっ?ああ、そういうことですか。「いえ:家」ということですか。なるほど、納得です。

    第4問:答は、3)戻る所がないから。

    「つばめ」では「어찌설지않으랴, 집도없는몸이야!(ああ、悲しきは家なきわが身!)」、家がないことを嘆いています。家とは故郷でもあり、故国でもあり、祖国でもあり、安心できる場所でもあるのですが、「개아미:アリ」では蟻は家を作っているのに、風は安心できる場所でないので、せめて柳の枝にでもと自分の身の上を悲しんで泣くという設定となっていて、これは素月の気持ちを表しています。

    歌樽先生:かなり攻めてきましたね。「無主空山」の理解が深まったようですね。

    詩子アナ:はい。何か素月の詩の世界が少し開けてきたようです。

    歌樽先生:それは素晴らしいですね。主役と脇役の関係を考えてみるとさらに理解が深まりますよ。

    詩子アナ:はい、そのあたりを考えてみます。「부엉새(ミミズク)」はどんな詩ですか。

    歌樽先生:「부엉새」はなかなか手強い詩です。

  • 紙上中継「ハングルの詩のある風景」素月と無主空山 第3回

    詩子アナ:久しぶりに「鋭い」といわれて、気分上々です!

    歌樽先生:原文そのものかどうかの確認は難しいところもあるのですが、「冬至書房」から1969年に出された安田保雄編の『海潮音』原詩集(『海潮音』所版別冊)にはこの詩の原文とその英訳詩が添えられています。(別冊 p. 48)

    (c)日本の古本屋 明治38年初版の表紙・背表紙

    詩子アナ:ということは「故国」というタイトルは原文にはないということですね。

    歌樽先生:さらに鋭くなってきましたね。

    第3問:上田敏が「故国」というタイトルを付けた理由を整理してみましょう。

    ちなみに、原文のタイトルは詩の第一行目と同じで、英訳の「Every little bird loves its nest.」にあたり、オック語での原語のタイトルでは「TOUT AUCELOUN AMO SOU NIS」となっています。

    詩子アナ:オック語ですか。調べてみます。「すべての小鳥は自らの巣を愛す」と出て来ました。

    歌樽先生:オック語の訳ですか。スマホの力はすごいですね。

    詩子アナ:第3問の答ですが、こんな感じでいかがでしょう。

    第3問:上田敏が詩人オオバネルの最も主張したかった故国復興の願いを代弁したかったから。

    歌樽先生:そうですね。当時、オオバネルはミストラル(1830-1914)と共にプロヴァバンス語とフランス南部の郷土文学の復興に尽力しました。ミストラルはノーベル賞も受賞しています。

    詩子アナ:そのあたりの事情を上田敏は知っていたのですか。

    歌樽先生:それはよく知っていたと思われます。非常に気を配って翻訳にあたっていますから。『海潮音』の訳詩だけでなく注の部分も見ておくといいですね。

    (c)青空文庫

    詩子アナ:はい、分かりました。素月は詩の中で「祖国」という語は使っていないのですか。

    歌樽先生:素月の詩はたくさんありますが、それらの詩の中には「祖国(조국)」とか「故国(고국)」という語は見つかりません。

    詩子アナ:「祖国」を叫ぶことが許されない時代に素月は生きていたんですね。この詩は祖国が奪われた悲しみを詠っていて、男女関係といった内容ではありませんから、第1問の4つの選択肢のうちの一つの「つばめ」は消えました。

    歌樽先生:どういう推理の組み立てをしようとしているのですか。

    詩子アナ:私流の推理では、第1問は生物3つ、無生物1つということで、生物かそうでないかの2択、生物を選べば、鳥か蟻か、つまり天か地かという2択、天を選べばツバメかミミズクかの2択となって、いずれも2択の問題と言う風に考えられるのですが、ツバメは無しとしましたので、相方のミミズクも無く、天か地かも無くなれば、結果は自ずと、、、

    歌樽先生:全く無意味な推理ですが、正しい答えが出てくることはよくありますから、不思議ですね。

    詩子アナ:では、その不思議というお言葉に甘えまーす!「推理は単純明快に」という私の座右の銘に従って、やってみます。

    第1問:答は、4)萬里城(만리성:万里城)です。

    歌樽先生:内容を知らないでも答えられるというのは問題の出し方がよくないからかも知れませんね。

    詩子アナ:ということは、正解ですか。

    歌樽先生:大正解です。

    詩子アナ:ヤッター。久しぶりに大歓声が聞こえるようです。でも、なぜ 萬里城 なんですか。

    歌樽先生:これには深い深い事情があるのですが、それは後でゆっくり考えることにして、その前に第2問を済ませておきましょう。

    詩子アナ:日本語の「若いツバメ」に最も近い言葉を選ぶ問題ですね。

    第2問:答は、3)제비족(つばめ族)です。

    歌樽先生:これを選んだ理由はなんですか。

    詩子アナ:大きな社会問題となったということですから、「若いつばめ」はひとりふたりではなく、多数であることをしっかり示す言葉が適切ではないかと思いました。つまり、少数か多数かという二択法という訳です。

    歌樽先生:なるほど、薬で言えば、二択は万能薬ですね。大正解です。

    詩子アナ:万能ではありません。それは正解した時だけで、そうでない場合の方が多いんです。

    歌樽先生:では、「無主空山」の中の他の詩をチェックしておきましょう。

    詩子アナ:「無主空山」の正確な意味は何ですか。

    歌樽先生:正確な意味を探るよりも、どういう概念を含んでいるのかを考えた方がいいですね。

    詩子アナ:「나의 金億씨에게。: 私の金億氏に。」という前書きは関連があるのですか。

    歌樽先生:ありますね。これは文章になっていますね。最後に「。」が付いていますから。

  • 紙上中継「ハングルの詩のある風景」素月と無主空山 第2回

    歌樽先生:歴史と言えば歴史といえるでしょうね。100年以上前ですからね。大正から昭和にかけて女性の権利獲得運動の活動家であった平塚雷鳥(1886-1971)が年下の奥村博史(1889-1963)と1914年に同棲を始めました。その後、岡村は自分が傍にいては雷鳥の活動に支障がでるのではと、別れの手紙を書きました。その中に「若いツバメは池の平和のために飛び去って行く」という内容があったことで有名になりましたね。

    詩子アナ:雷鳥と奥村はその後、別れたままだったのですか。

    歌樽先生:いいえ、子供もでき結婚届を出すのですが、このあたりは当時の社会状況もあって、なかなか大変なことが多かったようですね。

    詩子アナ:韓国には「若いツバメ」のような言葉はあるのですか。

    歌樽先生:似たような意味で使われる言葉があります。では、こんな問題を出しましょう。

    第2問:日本語の「若いツバメ」に最も近い言葉は次の内どれでしょうか。

    1) 젊은 제비(若つばめ) 
    2) 풋내기 제비(新米つばめ)
    3) 제비족(つばめ族)  
    4) 제비 사랑(つばめ愛)

    詩子アナ:「若いツバメ」と似た意味の言葉ができるにはそれなりの背景があったのでしょうね。

    歌樽先生:そうですね。1970年代には中東の建設ブームが背景にありましたね。

    詩子アナ:建設ブームで若いツバメですか?「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいですね。

    歌樽先生:それほど複雑ではないのですが、夫が中東へ長期出張中に妻の方は有閑マダムとなり、若い男性とダンスをするなどして、大きな社会問題になりましたね。

    詩子アナ:夫は遠い中東の暑さの中で汗を流しながら仕事をして妻に送金し、妻は子育てから解放されて時間を持て余し、習いものを始めた。そしたら、お友達から誘われてダンスを習い、そのあたりからおかしくなって、いろいろ大変だったようですね。

    歌樽先生:恐ろしい創作力ですね。

    詩子アナ:推理力と言っていただければ、もっと嬉しいのですが。

    歌樽先生:では、その推理力で第1問か第2問を考えてみてください。

    詩子アナ:以前、学んだような気もするのですが、ほぼ忘れてしまっていますので、もう一度詩の内容を見たいのですが。

    歌樽先生:こんな詩です。「つばめ」という詩ですが、訳詩もやってみましょう。

    제비(NO27) (NOは詩集『ツツジの花』のタイトル順番号)
    하늘로날아다니는제비의몸으로도
    一定(일정)한깃을두고돌아오거든!
    어찌설지않으랴, 집도없는몸이야!

    詩子アナ:では、こんな感じでいかがでしょうか。

    つばめ(NO27)
    大空飛び交うつばめさへ
    夕べに戻るねぐらあり!
    ああ、悲しきは家なきわが身!

    歌樽先生:3行目を「ああ」で始めましたね。

    詩子アナ:「어찌:いかで、いずくんぞ」がありますので、試みにこんな訳にしました。

    歌樽先生:このハングルの詩は、テオドル・オオバネル(プロヴァンス 1829-1886)が故国を思う詩をプロヴァンス語で書き、これをウイリアム・シャープが英訳し、その詩を上田敏が『海潮音』(本郷書院1905 p. 241)で紹介した訳詩をもとに素月がハングル訳したものでしたね。

    詩子アナ:素月はどうしてそんなに手の込んだことをしたのですか。

    歌樽先生:オオバネルの詩を訳したものだと言えば大丈夫だと考えたからでしょう。

    詩子アナ:大丈夫というのは何が大丈夫なのですか。

    歌樽先生:上田敏の訳詩のタイトルは「故国」、素月はそれを「つばめ」としていますね。祖国の独立運動を連想させる詩にはならないように工夫しています。

    詩子アナ:独立運動を連想させるとどうなるのですか。

    歌樽先生:官憲に逮捕される可能性が高いですね。朝鮮は日本の植民地になっていて、朝鮮総督府は独立運動にとても厳しく対処していましたから。

    詩子アナ:オオバネルの詩のタイトルの「故国」というのは原詩のものですか。

    歌樽先生:これは鋭い質問ですね。

  • 紙上中継「ハングルの詩のある風景」素月と無主空山 第1回

    詩子アナ:久しぶりに高尾山に来ると気分が晴れますね。 「梅がを比べてみつつ高尾まで」といった感じです。
    歌樽先生:この麓の高尾梅郷(ばいごう)は特に有名ですね。いつの間にか俳人になって、それなりのいいお友達もたくさんできたようですね。
    詩子アナ:えっ?それなりのいいお友達ですか?そんな風にまれてしまうんですか。
    歌樽先生:梅の香りといえば男女の関係を思い出させますからね。
    詩子アナ:なるほど、そうでしたか。変な句を詠んでしまいました。ところで、素月の作品の中に男女の関係は全くないように見えて、実は男女の関係を匂わせるような詩はあるのですか。
    歌樽先生:これはまた、返り討ちにあったようですね。
    詩子アナ: 「返り討ち」が今回のキーワードなんでしょうか。
    歌樽先生:なかなかの切り替えしですね。ともかく微妙としかいえませんね。
    詩子アナ:珍しく、すっきりしない言い方ですね。独断と偏見で構いませんので、そういうのがあればぜひ教えてください。
    歌樽先生:それとなく男女関係を示す詩ですか。それでは、こんな問題を出してみましょう。
    第1問:素月の次のタイトルの内、男女関係を暗示している詩はどれでしょうか。

    • 1) 개아미(개미: 蟻) 
    • 2) 제비(つばめ) 
    • 3) 부엉새(ミミズク) 
    • 4) 萬里城(만리성 万里城)

    詩子アナ:生き物が3つ、そうでないものが1つですね。
    歌樽先生:そういうことではなくて、「無主空山(무주공산)」という章の8つの詩、

    꿈: 夢
    맘 켕기는 날: そわつく日
    하늘 끝: 空の果て
    개아미: 蟻
    제비: つばめ
    부엉새: みみずく
    萬里城: 万里城
    樹芽: 木の芽

    の内、4つを出してみました。 「나의 金億씨에게. : 私の金億氏に。」という部分もあります。目次を確認しておきましょう。

    詩子アナ:4つの中からそれらしいものといえば、 「つばめ」あたりでしょうか。
    歌樽先生:怪しいと思う理由は?
    詩子アナ: 「若いツバメ」という言葉を聞いたことがありますから。
    歌樽先生:なかなか古い言葉を知っていますね。
    詩子アナ:女の方が年上で、その愛人の若い男のほうが 「若いツバメ」ですよね。
    歌樽先生:そうですね。この言葉も古い言葉になってしまいましたね。
    詩子アナ:歴史と言えそうな昔からあったのですか。

  • 金素月の詩について歌樽先生と詩子アナのやりとりで読み解くシリーズ「ハングルの詩のある風景」の新連載「無主空山」が正月14日から始まります。ご期待ください。これまでのシリーズは以下のとおりです。この機会に通しでお読みいただければ幸いです。クリックすると、各連載の目次を表示します。

    縦書き文庫でもお読みいただけます。